量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

レスター・バラード。暴力的な性向を持った彼は、家族を失い、家を失い、テネシーの山中で暮らしはじめる。次第に社会とのつながりさえ失われていくなか、彼は凄惨な犯罪に手を染める。ピュリッツァー賞を受賞したアメリカの巨匠が、極限的な孤独と闇を、詩情あふれる端整な筆致で描き上げた傑作。

チャイルド・オブ・ゴッドチャイルド・オブ・ゴッド
(2013/07/10)
コーマック・マッカーシー、Cormac McCarthy 他

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日本では映画「ノーカントリー」の原作者として知られるマッカーシーの初期の作品。読んでいると、ジェフリー・ディーバーの初期作品「監禁」などでの舌触りを思い出させる。ジメジメして暗い不快な場所に得体の知れない昆虫がいて気持ち悪いのだが、座ってじっと見ていると引き込まれるあの感じ。

実話に基づいているらしく事件自体は陰惨なものだが、これが読んでいてもあまりそう感じない。なんだか動物が狩に出かけて獲物を捕ってくるという生態を読んでいる気になってくる。作者の狙いもその辺にある気がする。タイトルは「神の子」だが、獣も同じ神の子ということか。

読点と鍵括弧を一切廃した文体は独特だが、誰かの独り言を聞いている気になってくる。ちょっと引用する。

>バラードは雪のついた木の枝を引きずって闇のなきら家に入ってくるとこの乾いている部分も凍った部分もある枝を小さく折りその折った枝を暖炉に詰めこむ作業に取りかかる。床に置いたランプの炎は風になびき風は暖炉の煙突のなかで呻く。

>それから床に座りライフルを拭き弾薬を膝の上に弾き出してそれらを拭きアクションを拭いてオイルを塗りレシーバーと銃身とマガジンとレバーにオイルを塗りまた弾薬をこめレバーで薬室に弾薬を一発送りこみ撃鉄をおろすとライフルを自分の脇の床に横たえる。

原文も同じように平板な表現がカンマを使わないでandとthat、thoseなどでつないでいるものと想像するが、それを日本語でここまでの仕上がりにしている翻訳者も相当なものである。とおもって検索したら、以前読んだコンラッド「闇の奥」もこの人が翻訳していた。ちなみに「闇の奥」は映画「地獄の黙示録」の原作だと言われている。

一箇所だけ、主人公が人間らしい感情に引き戻されるシーンがある。ここはかなり印象的だ。

>バラードは毒づき続けた。語りかけてくる声は悪魔の声ではなく既に脱ぎ捨てたはずの古い自我の声でありその声は時々正気の名の元に訪れて破滅を招く憤怒の縁から優しく引き戻そうとする手となった。

この一文があることで、本書が単なる動物観察日記となることを引き止めている。☆☆☆☆☆。

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ロッキー山中。死者たちの声が響く。「闘え」と。カナダの山奥へ流れてきた竜一は、父親の復讐を誓う日本人の少年と出会う。相手は巨大な組織。二人は、コマンドとして闘う。挑戦シリーズ完結編。

挑戦・いつか友よ挑戦・いつか友よ
(1988/10)
北方 謙三

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ついに「挑戦」シリーズ完結編。当blogには珍しく、あらすじを書いてみます。(含むネタバレ)


カナダの山中で暮らす竜一のもとに一人の少年が転がり込む。父親の仇をうとうとする少年に竜一は戦いを教え込み、そして少年は無念の死を遂げる。その死が竜一のなかの何かを呼び起こし、竜一は少年の無念を晴らすために日本へと向かう。


これまでの4作を簡単に振り返ります。
1作目「危険な夏」:深江の仕事を手伝い、手を汚す竜一。
2作目「冬の狼」:ペルーから戻ってきた竜一が深江を窮地から救う。
3作目「風の聖衣」:族長アキを殺された竜一が仇を取る。
4作目「風群の荒野」:インディオの村をかき回され竜一はジャマイカまで仕返しに。

竜一はこれまでは「そこに戦いがあるから戦う」「やられたからやり返す」ということで動いてきた感がありますが、本作で竜一は初めて自分の中に戦う理由を見つけます。それを強く感じるのは、少年が仇討ちに行っている間、なぜか竜一は雪山の中ではぐれ狼に戦いを挑みます。

>擦れ違う。二度。走った。横に跳んだ竜一の左腕に、牙が突き立とうとする。その前に、右手で狼の前脚を掴んでいた。腰をひねる。渾身の力だった。最後まで竜一は狼の前脚を放さなかった。岩に叩きつける。次の瞬間、狼は跳ね起きていた。やはり、逃げる気配はない。闘う相手を求めて、こいつはここまで登ってきたのか。

最後に竜一は狼に勝つわけですが、さびしく死んでいく狼にただ理由もなく闘う自分の姿をみたのかもしれません。そして少年は、傷ついた体で敵が迫っていることを竜一に教えようとし命を落とします。その少年の姿に竜一は自分が失ってしまったものを見たようです。日本にいる本当の敵に迫るまで竜一に何人もの相手が立ちはだかりますが、そのたびに竜一は「おれは父親の仇を討とうとした少年の代わりだ」と言い続けます。

竜一にも5作目にしてようやく熱い感情が湧いてきたようで、ただ強いだけだった4作目までとは全く違う読み応えがありました。そうはいっても、4作読まないとこの面白さは味わえないのですが。

今回も北方先生はちょっとだけ茶目っ気を出して、仇役に冗談を言わせています。竜一が仇の一人天野にその親分へ電話をさせるシーン。

>「実はデイヴ・オオシタの息子の圭太郎が来ております」そこで竜一は天野の手に力を加えた。なにを言われたところで構いはしないが、伝えたいのはそれだけだ。はあ、と天野が言う。怪訝な表情をしている。すぐに切れた。「歓迎する、とでも言ったか」「いままで、よく日本のために働いてくれた、とおっしゃった」

この直後に天野は竜一に殺されるのですが、それがこの親分には読めていた、ということでしょう。まああんまり気持ちのいいもんではないのですが、おもわずニヤリとしてしまいました。

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ブエルタエスパーニャ、ついに長い闘いが終わりました。
ホーナー、本当におめでとう!
この写真を見ていると、人柄が感じられますね。
ジャパンカップにも来るらしい。久々にサインが欲しいと思ったスポーツ選手です。



それから何度かここでも触れてきたエウスカディ、団体優勝を果たしました! パチパチパチ!



サミュエルサンチェスが「僕たちは家族だ」とコメントしています。この写真も本当にいい1枚でした。
テレビでは解説の人が、新チームはおそらくバスクとは関係なくなりチームカラーも変わる、と言ってました。バスク自転車基金そのものが今回降りたわけなのでしょうがないのでしょうが残念です。新オーナーのアロンソと親しいコンタドールがいずれ合流するという噂もあるようです。


さて、世界選手権は中継がないので、今年の自転車シーズンもこれで終わり。私にとっては初めて通して見たシーズンでしたが、印象に残ったシーンを三つあげると、

第3位 ツールデフランドールのカンチェ様!

最後の急坂でサガンを振り切った後は、60km近いスピードで悠々と大逃げを打ちました。その走りっぷりに惚れ惚れ(´Д` )





第2位 パリ=ルーべのカンチェ様!

完全に寝たふりから最後のスプリントを決めて勝った、まさに完璧なレース。



第1位 ブエルタエスパーニャ第20ステージのニーバリ!

「玉砕上等」のニーバリ、男気を見せましたね。3秒差のホーナーに対し渾身のアタック!最後に力尽きて落ちて行く姿もまた美しかったです。




次点はブエルタ第6ステージのトニーマルティンの大逃げ。あれで勝ってれば1位でも良かった。
最後はカンチェ様に潰されたわけですが。
こうしてみると、ジロはともかくツールのシーンがありませんね。まあ、機械が走るのを見ても面白くないw
とりあえずJ-SPORTS、来年の春まで一時解約すべきかどうか、迷ってます(笑


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