古希をまたぎ自転車を始めた面白いことの大家・伊藤センセーの超絶エッセイ。 10キロでお尻がミンチだったのがお仲間を引き連れ北海道ツアーにまで。 待望のライブラリー化。 喜寿でもこぐこぐ。


こぐこぐ自転車 (平凡社ライブラリー)こぐこぐ自転車 (平凡社ライブラリー)
(2011/01/08)
伊藤礼

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作者は小説家・伊藤整の息子で英文学者の伊藤礼氏だ。父がわいせつな箇所を伏せ字にして翻訳した「チャタレイ夫人の恋人」を伏せ字を復活させて再版したことでも有名だ(笑)

氏は日大の教授をされていたのだが、定年退官間際になって突然自転車に目覚め、自転車で走る気持ち良さにのめり込み、本作執筆当時で6台もの自転車を持っていたという、まさにマニア。本作ではお住まいの井の頭線沿線周辺をポタリングしたり、北海道にお仲間と遠征したりしているのだが、その文章のスタイルがなんとも軽妙洒脱で、自分が好きな自転車の話題ということもあるのだが、さすがは伊藤整の息子なかなかやるなと思し っていたら、なんと過去に第7回講談社エッセイ賞を受章されている。因みに第1回は野坂昭如と沢木耕太郎。

実は本作は今回で読むのは二度目。一度目はちょうど一年前で、自分も自転車にズブズブとはまり始めているときだった。自転車を買って闇雲に走り回ってみたものの、やはりスタイルを決めるのが大事だなあと思い読んだ本のうちのひとつだ。このゆるーい感じがいたく気に入り、歳をとってからこんな感じで自転車と付き合っていくのもいいな、と思った記憶がある。今回は今シーズン初めてのランニングの大会が終わったこともあり、少しリラックスしたいと思ってまた借りてみた。

でもユルい本だと思って読んでみたら、甲州街道で自転車ごと前転し歯を2本折り顔面を擦りむいた話とか、道東をツーリングして標高700mの知床峠に登ったりとか、古希を迎えた老人(失礼)としては驚くべき活発さで走り回っているのだ。しかも文庫版あとがきによれば、喜寿を迎えた2012年も毎日40km自転車に乗っているらしい。スゲエ!!

ちなみに続編の「自転車ぎこぎこ」も傑作だ。伊藤さんと自分は30歳離れているようなので、あと30年はこんな生活ができるんだと思ったら改めて嬉しくなってきた。自転車とマラソンとキャンプ、一生の付き合いにしたいな。☆☆☆☆。