昨年も同じようなことを描いたような気がするが、
せっかく今年のツールドフランスが始まったので、
改めて書いてみる。

ツールドフランスでは、出場する選手やチームの目標は、
総合優勝狙いかステージ優勝狙いに分かれる。
ステージ優勝とはその日1日のタイムが一番よかった人。
総合優勝は、全21日の通算タイム。
ちなみに1ステージは150㎞から250㎞前後。

1チームは9人。スタートは毎日一斉スタートなので、
総合成績がよくなくても、毎日チーム一緒にスタートできる。
なので、1日だけ頑張ってステージ優勝することは可能。
ツールドフランスでステージ優勝したら、出身の街では間違いなくヒーローだ。
ちなみに日本人はまだステージ優勝したことはない。

なので、どんなにすごい選手でも、21ステージ勝ち続けることは不可能だ。
ことによっては1勝もしなくても総合優勝することもある。
チームや選手ごとに、総合成績狙いとステージ優勝狙いはくっきり分かれる。
これを見極めるのが、レースを楽しむ第1歩になる。

ではどう見極めるか。
その前に、どういう形でステージの勝負がつくのかを書く。

コースのタイプは、おおまかにはフラットなコースと山岳コースに分かれる。
フラットなコースは実はチーム間の差が付きにくい。
というのは、自転車は固まって走ると空気抵抗が小さくなって速く走れる。
この効果は速度が速いほど高い。
したがって、平地のコースではお互いに相手の後ろについていれば、
そう簡単に逃げられることはない。
そして、最後の数百メートルのゴールスプリントで勝負するわけだ。
ただルールの関係で、スプリントは着順は着くが、タイム差は基本はゼロ。
同じ集団にいれば、ゴールスプリントで負けても同じタイムでカウントしてくれる。

一方で山岳コースでは、スピードが遅くなるので空気抵抗を利用できない。
すると俄然脚力勝負、しかも持久力勝負になる。
こうなると、マラソンと全く同じだ。体重も軽いほうがいい。
そういう選手は山岳コースでステージ優勝するし、
総合成績でも、やはり登りに強い選手が代々優勝している。

じゃあそれだけかというと、平地のゴールスプリントを専門にする、
スプリンターという種類の選手がいる。
彼らはだいたい体重も重く、山登りは苦手だ。
したがって総合優勝ははなからあきらめている。
その代わりにステージ優勝を狙いに行くわけだ。

よって平地のステージの時は、
そういうスプリント狙いの選手がゴールスプリントで爆発できるポジションにいるか、
あるいは総合狙いの選手がおなじ総合狙いの選手に比べて大きく遅れていないか、
といったことがレースを見る視点になる。

平地のステージのもう一つの楽しみは、逃げが決まるかどうか。
レース序盤で必ず集団から前に飛び出す選手がいる。
それは逃げを打っているわけだが、当然総合順位の低い選手が飛び出す。
大体は逃げさせてくれる。(総合上位の選手は絶対マークされるので逃げは決まらない)
しかし延々と逃げさせておいてから、ラスト5㎞くらいでメイン集団が大体は追いつく。
そしてスプリント勝負になる。逃げた選手は疲れ切っているので、スプリントになると無力だ。

山岳ステージの場合は、総合優勝候補が互いにけん制しながら山を登る。
そのどのタイミングで誰が仕掛けるのか、が見るポイントだ。
これを外すと、延々とフランスアルプスの景色の中を、
トップの選手が独りで山登りするのを見る羽目になる。
しかしこれも、仕掛けが決まると差がぐんぐん開いて、あっという間に5分差になったりする。
逆に3分くらいの差が一気に詰められることも珍しくない。

この登りの運び方はマラソンにも大いに参考になる。
しかし平地の戦い方は、自転車では走りながら休めるし、
その間に回復もしたりするので、マラソンとは全く違うスポーツだと言える。

☆☆

最後にチームの他のメンバーによるサポートについて。
平地のステージでステージ優勝狙いのスプリンターがいるチームでは、
チームメンバーの仕事はスプリンターを最後のスプリントまで運ぶのが仕事になる。
ライバルになるスプリンターは分かっているので、
その動向を見ながらチームのスプリンターを引っ張り、
ここしかないタイミングでスパートして他のチームよりも少し先に出る。
これで残り200m。あとはスプリンター勝負だ。

一方で総合狙いのチームだと、他の総合狙いのライダーの動向を見ながら、
遅れないようにエースを運ぶのが仕事になる。
時には相手チームの揺さぶりにより、途中でサポートメンバーが脱落することもある。
そんな時は他のメンバーがその穴を埋められるか、
少ないメンバーでエースを守れるかがポイントになる。

メンバーが3人残っていれば、順番に風よけになることで速く走れる。
一人しか残っていなければ、他のチームに対抗することは難しい。
そんな時は、さらに別のチームに引っ張ってもらうこともある。
最近のレースでは、オーストラリアの選手のチームを超えた友情が話題になっている。

☆☆

ダラダラと書いてしまったが、昨日のステージ成績と総合成績。
20150705ツールドフランス

ご覧のようにステージ成績では上位の選手にはタイム差がついていない。
総合成績では、ステージ3位のカンチェラーラが見事に1位。
いわゆる「マイヨジョーヌ」だ。今日は黄色いジャージを着て走っているはずだ。

この総合成績上位の選手は、いずれも平地が得意な選手。
逆にあまり山は得意ではない。たぶん山岳ステージでは大きく遅れるはず。
これは前日の大会初日が、個人タイムトライアルで平地ステージだったことによる。
それでもタイム差がついているのは、
タイムトライアルではチームメイトを風除けにできないので、
山登りと同様に選手個人の能力の差がそのままタイムに出るからだ。
さらには昨日のステージが非常に風が強く、
集団がバラけたので普通はないほど差がついた。

一方で7位8位あたりの選手は総合狙いだ。非常にいい位置に着けている。
ちなみに今大会では4強といわれるコンタドール、フルーム、ニーバリ、キンタナだが、
ニーバリとキンタナは昨日で1分以上遅れてしまった。
ま、まだまだ勝負はこれからだけど。

今回は3大ツールの一つ「ジロデイタリア」に今年の5月に優勝したコンタドールが、
連続して今回も勝つかどうかが注目されている。

お、長くなってきたが、そろそろテレビのスイッチを入れるか・・・・

(昨日のゴールシーン)
20150705aツールドフランス



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