量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

2013年10月

土の匂いに導かれて離ればなれの家族が行きつく場所は―。前作『すばらしい新世界』の幸福なあの一家になにが起きたのか。現代に生きる困難とその果てにきざす光を描く長編小説。

光の指で触れよ光の指で触れよ
(2008/01)
池澤 夏樹

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信じていた夫に裏切られて娘をつれて外国で暮らす妻が、自然と共生する生き方に目覚め、同時期に同じく自然に目覚めた夫との関係を振り返るお話。本作も、本作の前作にあたる「すばらしい新世界」もとても読みやすく理解しやすい。なので、先日(10/16)4時間近く電車に閉じ込められている間に、500ページ強の本作をほとんど読んでしまった。まあこの本があって助かったのだが・・・。 解説で角田光代が「この本は理系の本」と書いている。確かにアートは感じない。作品に取り掛かる前に「このプロットでこの線を出して、この線とこの線がつながって・・・」という作業を延々とやっていそうな気がする。

というのは、前作の「すばらしい・・・」もそうだが、登場人物のせりふがパッチワークな感じがあるのだ。あたかも「ここでこういう意図をもってこういうことをしゃべらせる」という小説構成上の計算が見え隠れする感じがある。もしかすると本作が新聞連載小説だったからかもしれないが、小説を書く上では、予め机上で計算したプロット構成を完全に原稿用紙の上でなぞりきれるとは限らない。筆が進んできてその箇所に来ると、前後のちょっとした言葉遣いの違いによって、別の表現をしたくなる(言わせたくなる)ことだってあるあずなのだ。しかし本作では、そこを強引に当初の意図通りに書こうとした不自然さが感じられる。

いや、しかしあれも、池澤夏樹の計算だったのかもしれないな。まだ「すばらしい・・・」を未読の方には申し訳ないが、前作であんなに仲がよかった夫婦は本作では離婚寸前である。といっても前作で妻・可南子のせりふが浮いていたから、実は自分にはあまり意外感がない。肩に力の入った、夫のやることなすこと全て先走って話す、妙にテンションの高い感じ。それが夫に対する必要以上のこだわり、依存とも見えたのだなあ。なので本作で夫が浮気した瞬間に妻の中で何かがポンとはじけてしまったようなのだが、通して読んでいると、逆にこの部分はとても自然だ。でも前作だけを読むと何か違和感が残るのだ。

実は「依存」は本作における重要なテーマでもある。夫婦間あるいは家族間の相互の依存による問題、すなわち前作では妻の夫に対する精神的依存、本作では離婚したときの経済問題がクローズアップされる一方で、現代経済における極端な分業による相互依存とそこからの脱却、すなわち自給自足経済のあり方みたいなものが同時並行で語られている。最終的には、依存する・しない、分業する・しないではなくて、それらを超越した精神的な自由を求めることが大事、というある脇役の生き方が紹介されることで、みんななんとなく幸せになるというのが結末だ。

ところで本筋とは関係ないが、相互に依存しない自給自足経済はそれだけみればあまり効率的ではない。でもその非効率さって、いざ外部からの供給が途絶えたときに自分でやっていけることに対することで、保険料を支払わないですむ分と相殺される。通常の分業をして自分が単品しか生産していないとき、実はすごく大きなリスクを採っているのだが、普段はそれには気づかない。そして供給が途絶えたとき初めてリスクの大きさに気づくのだ。堺屋太一の「油断」の世界ですね。

本作は、カタログ的にいろんな自給自足的生き方があることがわかる本なのだが、そのあまりにも意図的に配置されたプロットは小説として読む意味があるのか、最後までよくわからなかった。もしかすると、池澤氏のあの抑揚のない文体がそう思わせているのかもしれないが。それにしても、前作ではエコロジー的な側面は夫婦の相互依存とはほとんど絡めていなかったけれど、本作ではガラリと雰囲気が変わりました。連作なのにこんなにテーマの持ち方が違ってもいいんでしょうか。☆☆☆。

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2012年8月に開催され、10月に『NHKスペシャル』で放送された、日本一過酷な山岳レース「トランスジャパンアルプスレース」。酸素の薄い3,000mを超える山々を驚異的なスピードで駆け抜け、風速毎秒20mの暴風雨の中を黙々と進む参加ランナーの姿は、マラソンファン、登山ファンだけでなく、多くの日本国民に衝撃を与えた。その圧倒的な反響を受け、待望の書籍化! テレビでは見られなかった秘蔵エピソードや追加取材を加えてレースの全貌を描き、そして「ランナーたちはなぜこのレースに挑むのか?」に迫る驚愕のノンフィクション。



激走! 日本アルプス大縦断 密着、トランスジャパンアルプスレース富山~静岡415㎞激走! 日本アルプス大縦断 密着、トランスジャパンアルプスレース富山~静岡415㎞
(2013/04/26)
NHKスペシャル取材班

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いやー、久々にこういったスポーツノンフィクションを読んだが、感動した!

まず、その過酷さがすごい!
普通に登るだけでもすごい北アルプスの山々を、もっとも速い選手は2日で駆け抜ける。下手すると、日本海から太平洋まで5日かからない勢いだ。もう超人としか言いようがない。速い選手だと、1日の平均睡眠時間は3時間を切るらしい。

次に、このNHKスペシャルの番組がすごい‼︎
カメラマンとして、過去この大会で上位に入賞したランナーを何人も使っている。選手と撮影チームが一体ですごい競技を繰り広げている感じだ。そんなカメラだから、選手の間近に迫って撮影することができる。残念ながら番組は未視聴だが、近日中に必ず観るぜ!

そして一番心を動かされたのが、ゴールシーンだ!
各々、ここまで練習も含めて見守ってくれた家族がゴールに出迎えてくれる。選手たちもゴール直前にはなぜか「早く妻に会いたい!」と思う。いいではないですか。時々こういうドキュメンタリーで、レース優先で家族が離散してしまった選手が登場したりするが、このレースはこんなに非人間的なコースなのに、選手は至って人間的だ。そのゴールシーンには涙腺が緩むこと間違いなしだ!

あー、自分も長い距離走りたくなってきた‼︎
ということで、☆☆☆だ!

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先日、妻と駅前に買い物へ。息子は駅前から近い妻の実家に預けたので、珍しく二人です。

スーパーでレジの列に並ぼうとすると、駆け込んできたオジさんに割り込まれました。
ちょっとムッとしたものの、二人とも気が弱い(笑)ので、そのままスルーです。

その帰り道。
私「昔、伊丹十三っていたんだよ」
妻「知ってる。」
(妻は11歳年下なので意外)
私「あっ、そう?ナツバッバのリアル旦那さんだった人だよ」
妻「亡くなったんだよね。それで?」
私「むかし『男たちよ!』っていうエッセイ集書いててね」
妻「ふんふん」
私「そのなかに『走る男』っていうのがあったの」
妻「どんな内容?」
私「電車やエレベーターに駆け込む人っているじゃん」
妻「いるね」
私「伊丹氏によれば、そういう人は常に走ってるんだって」
妻「いつも時間にギリギリってこと?」
私「いや、閉じそうになってるドアを見ると駆け込みたくなる」
妻「(笑)」
私「そういう人は、どんなときも駆け込んじゃうんだって」
妻「貧乏性(笑)」
私「そう。だからそういう人を見ても腹を立てちゃいけない。むしろ哀れまなくちゃ」
妻「そうだね」
私「あっ、信号が変わるよ。走ろう!」

妻「うん!って、おい!(--;)」

今、思い返すと随分スノッブな人でしたが、エッセイは何を読んでも面白かったです(^^)

本の紹介ではありませんが、思い出したので投稿しました。

刑務所に送るか送らないかを決めるのは、遺族。
裁判で執行猶予がついた判決が出たときに、被害者や遺族が望めば、加害者の反省具合をチェックし、刑務所に入れるかどうかを決定できる制度「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が始まって38年がたっていた。30年前、その制度の担当係官だった経験があり、今は大学の講師として教壇に立つ井川。彼は、「チャラン」と呼ばれるいい加減な上司とともに、野球部の練習中に息子を亡くし、コーチを訴えた家族、夫の自殺の手助けをした男を憎む妻など、遺族たちと接していた当時のことを思い出していた。
加害者を刑務所に送る権利を手に入れた時、遺族や被害者はある程度救われるのか。逆に加害者は、「本当の反省」をすることができるのか。架空の司法制度という大胆な設定のもとで、人を憎むこと、許すこととは何かを丹念な筆致で描いていく、感動の長編小説。

手の中の天秤手の中の天秤
(2013/07/11)
桂 望実

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人が肉親を失ったときその悲しみをどうやって乗り越えていくのか、そのプロセスの中に加害者への憎しみや恨みが存在する。本作では執行猶予被害者預かり制度という架空の制度を設定しているところが注目されがちなのだが、読み始めてそれはこの制度の係官の目を通じることでより客観的に遺族の悲しみを描こうとする仕掛けなのだということに気がつかされる。

この制度は一種の復讐の仕組みであり、遺族は加害者への刑の執行に関与することで恨みを晴らしていく。しかし実際の世界でも、復讐で肉親を失った悲しみが直接的に癒されるわけではない。いや、癒される場合もあるのだが、それは制度で与えられるものではなく、結局は本人しだいだ。

遺族は、自分がどんなに悲しいのか周囲にもわかってほしいと思う一方で、安易な同情や応援を拒絶する。2年前の震災のときも「簡単にがんばってって言わないで」という報道がなされたことがあった。当事者でなければわからない感情はある。一方で、ふと悲しみが癒えた時に、そんな応援で実は元気付けられていたと気がつくこともある。

あまり同じレベルではないので恐縮だが、自分が以前フルマラソンに出場してゴールが近づいてきたとき、沿道の観客から「あと2kmだよ。がんばって!!」と声をかけられたことがあったのだが、実はその場所はのこり2.2kmだったのだ。正直に言うと、この応援にはカチンときた。「応援するなら正確な距離を言ってくれ!」まったく余裕がない中だとこうなってしまうのだ。同じような話を、他のマラソンランナーのブログで見たことがあるので、たぶん私だけではないのだろう。

そんなことを考えさせてくれた作品なのだが、作者の林望実、すこし1人1人のせりふが長すぎる場合があることを除けば、なかなかスムースに読ませてくれるテクニシャンである。「県庁の星」ではプロットが散漫だという批評もあったようだが、本作では逆に悲しみにはいろんな形があるということを淡々と示してくれていて、最後まで読めば筆者の言わんとするところをクリアに理解させてくれる。重ための三浦しをん(笑)

ちょっと甘めで☆☆☆☆。

実は金曜日の夜ランでふくらはぎが痙攣してしまい、今日はのんびりポタリングしようと切り替えたYoshi-Tです。風も強かったですしね。吹きさらしの河川敷を走るよりは、都心部のほうがましかと思い、東京方面へ出かけました。せっかく走ったので、久々の当日投稿。

その前に自転車のポジション調整。「自転車の教科書」を読んでから重心を意識して乗るようになり、ずいぶん漕ぐのに余裕が出てきたと思っていますが、そうするとあまり無理しなくなるというか、不必要に高いサドルは調整しようかという気になりまして、5mm下げました。これで足付き性は抜群によくなった。サドルから尻を下ろさなくても止まれるようになった。さらには、自転車が小さく感じた。

自転車の学校のおかげで首回りも余裕が出たので、同時にハンドルも20mm下げてみた。

予想外に快適。上の写真が一ヶ月前。下が調整後。後ろのタイルと比べると、ハンドルがサドルに対してタイル1枚分下がっているのがわかる。




さて、出発です。家を出たのは結局9時前。ルートはこんな感じ。



ネズミー市から江戸川と荒川を渡って新大橋通りに入り西へ。靖国通りから四谷経由、神宮外苑へ。
その途中に四谷で久々に文化放送横の坂を上ってみたが、最近ダンシングを練習しているおかげで、斜度14%をリア2枚残しの34-19で登れた! 自転車の教科書、おそるべし!

四谷三丁目の消防博物館。本当にいい天気。気温も20度弱で自転車に乗るには最高の気候(^^



ここから外苑東通りを外苑へ。絵画館前。今日は歩行者天国なので自転車もいっぱいでした。



国立競技場。空と照明塔のマッチングに思わずシャッターを切る。



千駄ヶ谷方面を望む。微妙に銀杏が色づいている。見ごろは例年11月下旬なのでまた来よう。



ここから外苑西通りへ。なんかこの辺には来たことあると思ったら、こちらはなんと妻が結婚式のときに着たドレスを作ってもらった店。懐かしい。そういえば11月は結婚記念日が来るんだった。



このあと自転車を漕ぐのに一生懸命であまり写真がないのですが、青山通りから皇居経由して、いつもの帰宅ランルートで自宅方面へ。走るのに楽なルートは自転車でも楽チン。往路と距離的には一緒だが、たぶん30分くらい早い。
唯一ネックなのが新木場辺りの357号線沿いの歩道。この辺りだけは交通量も多いので歩道を通らざるを得ないのだが、この歩道が自転車がやっとすれ違えるくらいの幅しかない。この付近はオリンピックの競技会場も多いのでなんとかならないものか。

最後、江戸川区とネズミー市の間を流れる旧江戸川にかかる舞浜大橋を渡っている時、北から東に向かってヘリの編隊が飛んでいくのが見えた。家に帰ってニュースを見たら今日は安倍総理が伊豆大島に行ったらしい。方向は逆だが、その関係か?




12時ちょっと過ぎに帰宅。やっぱり自転車は楽しい! たった3時間でこんなに楽しいとは。

と思ったら、何といつの間にかオドメーターが4,000kmを超えていた。ちょうど11ヶ月経過でこの距離。マイカーですら年間3,000kmなのに(笑

7月にキャンプにはまった当初はキャンプに自転車を持って行ったりしていたのだが、荷物が増えたのと現地で時間がないのでそれもやめてしまい、今はちょっとペースは落ちたが、冬場はキャンプの頻度も下がるだろうからまた乗ろう! その前にこのめくれたテープをなんとかしようw



実は昨日の土曜日に、残りの枝豆をとってきた。(枝豆については印旛沼サンセットヒルズキャンプレポ前編ご参照) これがまた大量にあるので、しばらくは枝豆三昧。昼飯にまで枝豆が。「ヘイ、枝豆ラーメンセット一丁!」



妻にドレスの店の写真を見せたら「初心忘るべからずだねw」って。はい!私は常に初心者です(^^)

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