映画論はきうじにお任せしているので、ここではあくまで番外編ということでニーズは無いと思うが、備忘録の位置づけで感想を書いてみたい。往路、復路ともに11時間もあったので、ゆっくり映画を楽しむことができた。

往路は読書もしていたので「レッドスパロー」「BLUNK13」「15時17分パリ行き」の3本。復路はもう読書もやめて酒を浴びながら「祈りの幕が下りる時」「嘘を愛する女」「ペンタゴンペーパーズ」「グレイテストショーマン」の4本。

なおネタバレしまくりですので、まだ観ていない人は読まないでください。特に「レッドスパロー」「祈りの幕が・・・」「嘘を愛する・・・・」。

【レッドスパロー】
監督:フランシス・ローレンス 主演:ジェニファー・ローレンス

全然知らなかったのだがジェニファー・ローレンスってアカデミー主演女優賞なんですね。その受賞作「世界に一つのプレイブック」も機内のメニューにあったのに惜しいことをした。

映画の方はストーリーが秀逸。ルカレとかフリーマントルの世界観が見事に再現されている。「寒い国から来たスパイ」に似ていなくもない。ただ細部はかなりお粗末で、そもそも部屋の中で盗聴の心配をしないで重要な会話をするスパイなんていない。街を歩くときも無防備すぎ。まあ逆にそういうデティールを追いかけすぎて、「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」(映画のタイトルは「裏切りのサーカス」)なんて映画として失敗しているのだが。

でも細かいところは別として、復讐という結末に向けて一本道で進んでいく(ことが最後に分かる)のがとてもよかった。ジェニファー・ローレンスは、アメリカで成功する女優の条件である垂れ目という特質を備えている(メグライアンとかテータム・オニールとかキャメロン・ディアスとか)ので、今後が楽しみですね~。もうすでに一番稼いでいる女優さんですが。


【BLUNK13】
監督:斎藤工 主演:高橋一生

テーマ曲が「家族の風景」という「キッチンにはハイライトとウィスキーグラス」という歌詞から始まるやや退廃的な空気が全体に漂う。前半の父親の不甲斐なさからくる家族の悲惨な状態の描写がリアルだからこそ、後半の亡くなった父親の友達の独白がしみる。

製作にも名を連ねる福山雅治は、これを母親の物語だと言っていたんだけど、オレの目からは高橋一生演じる次男とリリーフランキー演じる父親の物語に見えた。斎藤工はできるだけコンパクトにこの物語を作ろうとした意図が垣間見えて、冗長な表現が無くてよかった。

それにしてもリリーフランキーって凄いね。福山雅治ファンのオレは「スクープ」も観たんだけど、あの狂気がこの映画ではまったく出てこない。同じように冴えない中年を演じているにもかかわらず。是枝監督作品でカンヌのパルムドールに輝いたこともうなずける。パルムドールと言えば「うなぎ」の役所広司ですよ。いまや役所広司とリリーフランキーは同格なわけですよ。オレと同い年なのに(笑)

斎藤工はやりたいことがはっきりしていていい。これからも振り回されないで作りたい作品を作ってほしいなあ。

【15時17分発 パリ行き】
監督:クリント・イーストウッド 主演:スペンサー・ストーン
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事実に基づいたドキュメント映画。主役級の3人を本人が演じるということで話題になった作品。イーストウッド監督はとにかく撮るのが速いので有名で、本作でもチャッチャと撮っている感じが伝わってくる。そういえば北野武も撮るのが速いんだよなあ。

普通の人生を送ってきた3人が、アムステルダムからパリに向かう超特急「タリス」の車上で乱射テロに遭遇。まさに人生に一度あるかないかのできごとに直面して、人は何ができるのか、を問う作品。最後はオランド大統領がレジオンドヌール勲章を授与する本当の映像まで出てくる。そりゃあ本人たちが映画に出てくるから、本当の映像も流用したくなるよね。

前作「アメリカンスナイパー」もいろいろ議論は呼んだのだが、イーストウッド監督はとにかく素材となるストーリーをあれこれひねらないで役者に委ねて出てきたものをそのまま撮る主義。時に雑に見えがちだが、自分の主観を交えるよりもより伝わるものが多いと考えているのだろう。

ちなみにこれをみた翌日に、フィレンツェからローマに向かう特急に乗ったオレ。アラブ系の人が大きなバッグを抱えているとドキドキしたことは白状しておこう。と言っていると、日本の新幹線でも凄惨な事件が起きましたね。この映画でも犯人が主人公の首に切りつけるシーンがありました。犠牲者の方の冥福をお祈りいたします。

でもなんだか新幹線では事件や事故は起きないと思われている節があるが、それはあくまで運行を原因とする事故であって、移動する車内での事件であれば西鉄バスや新宿バス放火など、なんどでも起きている。新幹線で事件が起きない理由はない。

【祈りの幕が下りる時】
監督:福澤克雄 主演:阿部寛

知らなかったのだがこれを書くために監督のことを調べたら、あのテレビドラマ「半沢直樹」の監督だった。そして福沢諭吉の曾孫でもちろん慶応出身。しかもオレと同い年なんだけど(笑) そういえば他にも「陸王」とか「下町ロケット」も監督しているのは三田会繋がり? でもラグビーでも日本代表で190㎝100kgらしいよ。

映画の方だが、もともとのストーリーがちょっと回りくどいせいだろうか、映画もちょっと回りくどいのだが、途中から阿部演じる加賀恭一郎のパーソナルヒストリー職が強くなってくる。加賀の母親が15年前に亡くなった時に一番近くにいたはずの人(小日向文世)が犯した犯罪だから。

松嶋菜々子がその娘の立場で登場する。松島と小日向は遠い昔に罪を犯していて、そこはまさに砂の器の再現。所詮は救われない立場だったのが辛い。どんなに頑張っても抜け出せない境遇はある。それがなくて出会ったら、小日向と加賀の母親が交際していたくらいだから、松島は加賀の良い伴侶になったかもしれないのにと思うと、残念な気持ちになった。でも映画というよりはテレビドラマの延長だなあ。
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【嘘を愛する女】
監督:中江和仁 主演:長澤まさみ

今回いろいろ観た中で、一番心を動かされた作品。ストーリーは時折あるようなものなのだが、何より長澤まさみがいい。予告編でも出ているけど、5年間同棲してきた高橋一生が、実は身元を偽っている人だということが明らかになり、という内容。

とにかくネタバレしないと内容が説明できないので、そのつもりで書きますが、高橋一生が身元を偽っていたことが分かった瞬間は長澤まさみはまるで他人のような目で高橋を見る。それはまさに、結婚した相手が実は出世もできない能力がない奴だったとわかった時の打算たっぷりの妻が見せる感情に似ている。

世の中にこういう妻はたくさんいますよね。本作の設定はその極端な例に過ぎない。相手が自分に何を与えてくれるのかしか考えていない。

でも高橋の隠された生活の実態を知るにつれて、彼の彼女に対する愛情を認識し彼が自分に与えてくれたものの大きさを知るに至る。ちょっとした出来事で、実は高橋が失った家族に対して気持ちを注いでいるのではなく、自分に対してその気持ちを注いでいてくれたことを知る。ここは号泣ポイント。

長澤まさみは自然な演技で、前半の嫌なオンナも後半の愛情たっぷりなオンナも演じてくれている。酒に酔う演技とかはもっと勉強が必要な気がするが、ダンナに満足できていない女性には特におすすめな一本です。

【ペンタゴンペーパーズ】
監督:スティーブン・スピルバーグ 主演:メリル・ストリープ

やっぱりスピルバーグはあざとい。そろそろネタ切れなんでは? と思わせられた一作。過去の作品も純粋なエンターテイメント作品はいいんだが(インディジョーンズとか)、「シンドラーのリスト」とか本作のように政治色が感じられる作品の時に、どこまで背景情報について伝えようとしているのか疑問に感じることが多い。

例えば本作って、当時の政治的背景を考えると大陪審での審理は勝訴するに決まっているわけです。それをあたかも言論の自由に向けた戦い、のように描くところにあざとさを感じる。ほら、時事的に目を引く事件が起こったら、すぐにそれに呼応した小説を書く作家がいるじゃないですか。そんな感じです。本作でも当時のベトナム戦争をめぐる政治的背景にはほとんど触れていない。世論がもうベトナムに対してはネガティブだったんです。

この監督はインディジョーンズとかジュラシックパークとかそういうエンターテイメント作品を撮ってればいいんじゃないでしょうかね。
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【グレイテストショーマン】
監督:マイケル・グレイシー 主演:ヒュー・ジャックマン
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今調べて分かったんだけど、ヒュージャックマン演じるP.T.バーナムって実在の人物なんですね。19世紀の中ごろに、いわゆる今のサーカスの形態を確立した人。色々脚色はあると思うが、その人生はおおむねこんな感じだったんだろう。

ヒュー・ジャックマンが真摯な人過ぎて、本当はもっと山師だったはずの主人公が美化されている。それから劇中で重要な役を演じるジェニー・リンドも実在の人物だったようだが、このリンドを演じたレベッカ・ファーガソンって既視感があったんだけど、ミッションインポシブル・ローグネイションのヒロインだった女優さんでしたね。

どうでもいいんだけど、ミッションインポシブル・ローグネイションの冒頭でトム・クルーズがアクションを繰り広げるA400M輸送機。今回の出張での会議の参加者の中に、この輸送機を作っている人の娘がいた。(かなり遠いw) 帰りに観たのでそんな縁も感じた次第。


映画自体は歌って踊って、とっても心が躍る内容でした。

長々と書きましたが、今回の出張でみた映画はこんなところです。
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