先日「愛すべき主人公たち」を書いた直後、やっぱり書くんじゃなかった、と思った。書き終えてベッドに入った瞬間から「ああ、あれもあった!」「これも入れとけばよかった!」って思い始めてもう大変。せめて翻訳ものに限定しておけばまだよかったのだが、うっかり本邦小説を入れたがゆえに・・・・

ということで、続き(笑)




こちらは北方謙三の「ブラディ・ドール」シリーズの第10作。多少中だるみしながらも10作までもってきたのは凄い。5年前、このブログがまだ読書ブログだったころこのシリーズについては徹底解剖(笑)しているので、そちらもご覧ください。ああ、誰が何巻で死ぬとか全部書いてます(笑)
【死屍】ブラディ・ドール総括【累々】
このシリーズのいいところはとにかくハードボイルドに徹していること。中途半端にセンチメンタルになったりしない。そして文体のキレのよさ。

北方謙三ではこのシリーズと前後して「挑戦」シリーズも存在する。こちらは第1作ではひよっこだった主人公竜一が、第2作でペルーのゲリラに鍛えられて半端なく強くなって戻ってくる。まあ竜一が強いだけのシリーズと言えば言えなくもない。北方謙三はシリーズものはB級っぽくなるのだが、単発だと急に文学作品の趣を示す。初期の「弔鐘遥かなり」「逃れの街」などは本当にヒリヒリする感じがよい。これはまた別途。



池波正太郎はなんとなく格調があるのだが、こちらもシリーズ物になるとB級感が出てくる。主人公の秋山小兵衛は男やもめで鐘ヶ淵あたりに住んでいるて、江戸の街には船でやってくる。これが実に洒脱だ。
そしてなぜか若い女中が同居している。しかし剣は枯れていて(笑)でとにかく強い。息子の大治郎も強いのだがどちからというと力任せ。この二人が色んな事件を解決していく。番外編もたくさん。池波正太郎は16巻まで書き終えて亡くなった。
番外編で小兵衛が食通ぶりを発揮する巻がある。池波正太郎も存命中は山の上ホテルのレストランで天ぷらをよく食べてたらしい。空腹のときに読んではいけない(笑)。鬼平犯科帳も面白かったなあ。



用心棒日月抄 (新潮文庫)
藤沢 周平
新潮社
1981-03-27

ゆえあって脱藩し江戸に住む浪人が、幕府とその秘密組織の騒動に巻き込まれていくお話で、その合間にアルバイトとして用心棒稼業を営むお話。もちろん主人公はめちゃくちゃ強い。時代劇の面白いところは、強さの次元が違う忍びとも普通の剣士が対等に戦えるところ。
時期的には藤沢周平後期なので、前期頃のアンニュイ感がない。それを良いと思うかつまらないと思うか。全4巻。藤沢周平は単品小説に実に良いものがおおいです。


太陽がいっぱい (河出文庫)
パトリシア ハイスミス
河出書房新社
2016-05-07

映画の「太陽がいっぱい」が有名になり過ぎて最後にリプリーは捕まると思われているが、原作は捕まらずにのうのうと逃げ延び、さらに4作ばかり悪事を働き続ける。読んでいると犯罪を犯すことが人間の本質みたいに見えてきて不思議な気持ちになる。「罪と罰」を読んでいる時と同じ感じだ、
そしていつの間にか、逃げ回るリプリーを応援している自分がいる(笑)



隠蔽捜査 (新潮文庫)
今野 敏
新潮社
2008-01-29

「事件は現場だけじゃなく、会議室や家庭でも起きている」がキャッチコピー(笑)。その言葉通りに主人公の堅物警視竜崎が、ルールを盾にして官僚社会を動かすお話。本音と建て前を使い分けない主人公が本当にさわやかに見える。世の中を斜めに見る奴はすぐに「どうせ本音は建前とは違うんでしょ」というのだが、どっこい、みんなの大好きな尾崎豊のある意味対極にいる人間だ。
竜崎は目的が明確なので手段は選ばないしプライドなんてくそくらえだ。プライドなんてないっていう人間に限ってプライドを傷付けられて上司と喧嘩したりするのだが(笑)、竜崎はたぶんそれがルールであれば土下座でもする奴だ。
今野敏には他にもシリーズ物が多く「任侠学園」なんて最高だが、ここでは割愛。


ケインとアベル (上) (新潮文庫)
ジェフリー アーチャー
新潮社
1981-05-27

これ、シリーズじゃないのに入れていいのか迷ったのだが、よく考えたら「ロスノフスキ家の娘」という続編があったので文句なしにB級小説入り(笑) マイケルケイン主演でTVドラマにもなったのでずいぶん有名になったが。ジェフリー・アーチャーは元は英国国会議員で自分も詐欺に遭って「百万ドルを取り返せ!」を書いて議員として復活した人。その後また事件に巻き込まれて議員はやめてしまったが、小説はまだ書いているようだ。もうこれが、これぞB級って言わんばかりの小説群(笑) でもストーリー構築の確かさは折り紙付き。安心して読める。


消されかけた男 (新潮文庫)
ブライアン フリーマントル
新潮社
1979-04-30

チャーリー・マフィンシリーズの第一作。東から逃げてくる男を救出すべくポイントチャーリーに英国情報部工作員のチャーリーマフィンは急ぐが・・・
二重スパイというのはこういうことなんだというのは、この小説で初めて知った。そして人間がその環境次第で誰でも裏切るということを知ったのもこの作品。エスピオナージュ小説の金字塔ですな。それ以外に何も言うことはありません。



B級といえばル・カレを置いて他にはないだろう。凄腕の太っちょスパイマスター、スマイリーが縦横無尽に活躍するシリーズ。もともとはあの名作「寒い国から帰ってきたスパイ」が発端なんだが、それいこうも旧ソ連と英国の間の謀略合戦をめぐって裏切りの連続。本作は「裏切りのサーカス」という映画にもなったが、そこでのゲイリーオールドマンの演技が秀逸。小説は良くも悪くも英国風でとにかく退屈な描写が延々と続くのだが、そこを抜けるとカタルシスが待っている!ホントか?w




LAコンフィデンシャル(上) (文春文庫)
ジェイムズ・エルロイ
文藝春秋
2016-05-28

ジェイムズ・エルロイが好きな向きには「これのどこがB級なんだ!」と怒られそうだが、確かに大河ドラマではあるが文学的な味わいは無いわな(笑) 「ブラック・ダリア」「ビッグ・ノーウェア」「LAコンフィデンシャル」「ホワイト・ジャズ」という4部作。映画になったので「LA」が有名だが、個人的には「ビッグ・ノーウェア」で登場人物の輪郭がはっきりするところが好きだ。物語的には黒幕のダドリースミスが自分の人生を始末する「ホワイト・ジャズ」が好きだ。まあ全部読んでください。ザ・暴力です。アメリカ版「仁義なき戦い」かな。

ちなみにエルロイには「アメリカンタブロイド」というシリーズもあって、こっちはケネディ暗殺に絡んだギャングの動きを描いている。こっちも面白い!



これも一応「過ぎ去りし世界」という続編があるのでB級小説に入れたが、いいのか!? デニスルヘインは「ミスティックリバー」が有名であちらも名作だけど、こっちの1920年代を描いた小説も相当に読み応えあり。男たちの血と骨が激突する!



ブラック・ウィドウ 上 (ハーパーBOOKS)
ダニエル シルヴァ
ハーパーコリンズ・ ジャパン
2017-07-22

イスラエルの秘密機関モサドの工作員にして絵画修復士ガブリエルの活躍を描くシリーズ。例のブラックセプテンバーへの報復にも参加した主人公が、今やISISとの戦いにも参加している。イスラエル、死ぬまで戦い続ける国家だ。作風的にはグレイマンとかパーフェクトハンターに近い。





チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
トム・ロブ スミス
新潮社
2008-08-28

これは凄い!作者は英国人なんだが、解放前のソ連(ハンガリー動乱とか出てくる)の全体主義国家の恐怖感を実に見事に描いている。これと「1984」を併せて読むといいのでは。ベースはソ連の警察官の話だが、1950年代の当時の時節と合わせて読むと緊張感もひとしお。続編は「グラーク57」他。収容所列島の世界が広がる。


他にも読んだ人気小説で、例えばスカーペッタシリーズやボーン・コレクターシリーズもあるんだが、なぜかここに書く気にならず。手垢が付き過ぎているんだろうか。前回が16作で今回が14作。こういうのはとにかく保管にスペースを取るのでどうしても図書館で借りてしまう。すいません。





ダラダラと「B級」とか言いながら書いてきてしまったが、こういう作品から得られるバイタリティとかエネルギッシュさとかが自分の人生を元気づけてくれたことは間違いない。こんなふうに生きようっていう主人公ばかり(除くリプリーw)。

大学の時に「読書の味わい」という文章を英語の授業で延々読まされた。よく覚えてないけど「読書は読む人を経験したことのない世界に連れて行ってくれる」「読書によって人は過去の人が考えた世界に耽溺することができる」「読書は魂を浄化する」とかなんとか。

自分の世界を構築できた作家には本当に没頭できる。文学的に優れた作品を特に選んで読んではいない。というかむしろ避けている。そういった作品にみられるあざとさが鼻に付くからだ。とくに最近の作家。

作家が自分の世界を作る。そこに読者を連れていくためのしつらえをする。その世界での出来事を語る。それだけでいいんじゃないだろうか。その作家の世界が構築されていれば、読み手がその世界に浸ることができれば、それで傑作だ。

文学を語るのは、漱石よりももっと前の近松とかもっと前の古典を読んでからにしようと思っている。ちなみに今読んでいるのはこれ。kindleは安い。
Fear: Trump in the White House
Bob Woodward
Simon & Schuster
2018-09-11


さすがはウッドワード。オバマのときも政権内部の本を書いている。この詮索好きはやめられないようだ(笑)


先日芥川賞が発表されたが、東北の震災について描いた作品は選ばれなかった。盗作とか過誤引用が騒がれたせいだと思う。自分は対象になった元の作品も読んでいたし今回の作品も読んだけど、特に盗作云々は感じなかった。それを言うなら「永遠の〇」の方が盗作の嵐だ(伏せ字になってないw)。

文学賞ならばアウトで人気作品で大儲けするのはいいのか。自分は基本は政治的には中立だが、あの「永遠の・・」の作家だけは受け付けられない。

話がそれた。

芥川賞候補のあの作品の作者。別に盗作と言われた箇所の描写を評価されて候補になったわけでもないのに残念だ。ああいうことは編集者が気を付けているべきことではないか。昨今の日本の若手作家の作品は文体は素晴らしくても構成に難があることが多くて(本当に多い)、そういう本を読んでいると本当に凹む。だから新しい作家の本を手にする気になかなかならない。「本屋大賞」とかに名を連ねている作家は特にそうだ。

それだけ本を読むときには誰が書いたかは大事だ。ということで次回は「オレが好きな作家ベスト50」をお見せしたい。お楽しみに。


本日の走行距離:10.0km
今月の走行距離:148.0km
本日の最低体重:60.3kg
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