量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

カテゴリ: >さ行(ノンフ)

数々の最新鋭軍用機を開発した知られざる〔創造型組織〕の全て!!スカンク・ワークス(ロッキード先進開発計画)はF‐104、U‐2、SR‐71、F‐117Aなどのハイテク機を短期間・低コストで開発!!「少数精鋭・独立・秘密」を第一義にした例のない組織の責任者がその全貌を明かす。(amazon)




ステルス戦闘機―スカンク・ワークスの秘密ステルス戦闘機―スカンク・ワークスの秘密
(1997/01)
ベン・R. リッチ

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たまリバーの疲労が抜けてきたのか、今日の朝ランでは妙に体が軽く感じたキミ兄です。

最近ランニングネタが多いのですが、本当はミリタリーおたくです。それを思い出してもらうために時々こういうネタもupします。油断しないでください(笑)



この本は成田の航空博物館の図書室で見つけたのだが、もうまさにオタクごころをヒット!!な本なのだ。適度に細かく適度にわくわくさせる。しかも題材がまたかっこいい!! 最新鋭のF35もF22もロッキード製なのだが、なぜロッキード社にそんなに競争力があるのか、その秘密に迫る本だ。

まず最初に、あまりご存知ない方のために、ロッキード社と超音速偵察機SR71のご紹介を。

山本五十六機を撃墜したことで一躍有名になったP38に始まり、最後の有人戦闘機と言われたF104、キューバ危機で活躍した高々度偵察機U2、ビー玉以下の大きさにしかレーダーに写らない(だから駐機しているとコウモリが衝突するらしい)ステルス爆撃機F117などを開発したロッキードの開発チーム「スカンクワークス」。その業績のなかで最も偉大なのは、66年に実戦投入されたSR71ブラックバードの開発だろう。

U2がソ連の対空ミサイルに打ち落とされるようになり、ならばミサイルが届かない超高空をミサイルが追い付けない速度で飛べばいい、という発想で開発が始まったSR71。航空機では初めて外皮をチタニウムで覆い、独特の胴体の形状によりステルス性も高まるなど、斬新なアイデアの塊だった。

実戦においては設計思想通り、その高さと速さで1度も撃墜されることもなく、パイロットは飛行中に何度もスカンクワークスのリーダーであるケリー・ジョンソンを称えたという。90年代にはあのチェイニーが国防長官のときに全機退役させられてしまったが、現在でもその性能に匹敵する航空機は作られていない。まさに21世紀の飛行機だったのだ。(紹介終り)

なんだか秘密兵器の決定版、って感じなのだ。自分も世界中の軍用機のかなりの数を知っていると断言できるが、本機はかなりのお気に入りだ。本書にはパイロットや空軍の将官の回想が挿入されているのだが、ここまで現場の人間に称賛される武器を作れるなんて、ほんとに民間でいう商品開発の大勝利のモデルケースなのである。

最後に死の間際のケリーの家の上空に空軍が配慮してSR71を飛ばし、その衝撃波でお別れをするシーンは圧巻だ。時々軍隊はこういう粋なことをする。ケリーの人生はその大半が兵器開発に捧げられた訳だが、こんな幸せな仕事人人生も珍しいだろう。ケリーは全米だけでなく敵国の軍関係者からも尊敬を集めていたはずだ。


仕事するならこうなりたいよね、っていうビジネスマンの夢のようなお話であった。☆☆☆☆☆。


せっかくなので、ブラックバードの写真を。何度見ても鳥肌がたつ美しさだ。実はニューヨークのイントレピッド博物館で実物を見たことがあるのだが、飛行する姿にはかなわない。


『直掩隊は爆装隊の楯となって、全弾身に受けて爆装隊を進めよ』あまりにも非情な命令のもと、直掩機のベテラン搭乗員が見た爆装機突入のその瞬間!笑って征くかのごとき特攻隊員がかいま見せる素顔と苦悩に心を痛めつつ、自らも爆装隊員となった零戦パイロットが克明に綴ったありのままの戦争!遺骨なき戦友に捧げる鎮魂の譜。

修羅の翼―零戦特攻隊員の真情 (光人社NF文庫)修羅の翼―零戦特攻隊員の真情 (光人社NF文庫)
(2008/09)
角田 和男

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もうとにかく、著者が戦争を悲しく苦しく率直に振り返る本である。中国大陸、ラバウル、房総、フィリピン、台湾と転戦していくが、自分の失敗、辛かったことを隠さず記している。ラバウルで列機を失ったこと、部下を特攻に行かせてしまったこと、特攻の直掩で何度も飛んで特攻の瞬間を目の当たりにしたこと、自分も特攻に選ばれたが免れたこと、など…

一方で、山本五十六が撃墜されたときについては、何やら動きがおかしかったと言ってそっけない。提督の自殺説さえ示唆している。それどころか当時の現場では山本の人気がなかったとまではっきり言い切っている。

「大空のサムライ」の坂井中尉など撃墜王は列機を失ったことがないのが自慢だったりするが、角田氏は部下や上官を守りきれなかったことの懺悔が並ぶ。特攻の直掩機になったときも、敵艦隊に誘導しないように苦心するが特攻機にバレて玉砕される。

零戦がデビューした中国戦線から終戦まで、ずっと零戦に乗り続け生き延びたこと自体が凄いのに、著者の戦争体験は辛いことばかりだ。撃墜機数を明らかにしないのも凄い。もう読めば読むほど「修羅」の意味がよくわかる。この本は2読目だが、あの永遠にゼロな小説が本書を下敷きにしているのが良く分かる。一方、主張はまったく異なることも良く分かる。あちらの本がなぜ売れるのか、不思議でしょうがない。こちらは☆☆☆☆☆。

鮮やかな光芒を放って去る、「未来を創った男」の破天荒な生涯。百人以上の女性と関係を持った性豪、『タイム・マシン』『宇宙戦争』で富と人気を得た寵児、戦争の根絶を提唱し、原爆の発明に絶望する、「世界政府」を夢見た男…蒼穹を周回する鬼才「H・G」の軌跡を追う。


絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ絶倫の人: 小説H・G・ウェルズ
(2013/09/25)
デイヴィッド ロッジ

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事実に基づいた小説をファクションというらしいが、本書は「宇宙戦争」で有名なH.G.ウェルズの生涯を追ったファクションである。本書ではどうしてもウェルズの性豪ぶりが先にたってしまうのだが、同時に常に未来の脅威を心に描き、それを社会に向けて発信してきた作家とみえる。

例えば航空機の登場と同時に、これが兵器として無限の可能性を帯びていると気付き「空の戦争」を著す。そこには大洋を越えて飛行船がイギリスを爆撃する様子が描かれている。第一次大戦でドイツがイギリスを爆撃する10年前だ。「解放された世界」に至っては1914年の段階で原子爆弾の誕生を予見している。このためルーズベルトやスターリンなど政治家との交流も多い。

一方で、好みの女性には手当たり次第声を掛け関係を持ち、しかも真剣だったようだ。最初は従妹と若くして結婚するが、教え子に好みの女性がいたらすぐに離婚して再婚している。今行動しないとこのチャンスは二度とめぐってこない、という強迫観念にかられているがごとくだ。これらの双方からウェルズがどんな気持ちで日々過ごしていたのか、何となくわかる。多分原子爆弾を心配するのと同じように、女性に逃げられないか、神経をすり減らしていたに違いない。

その後も色んな女性に手をだし、時々子供も作ったようだが、驚くべきは全てこの2番目の奥さんに報告していたことだ。恐らく奥さんの理解を得ている、というのが彼の安心材料だったのだろうか…

ちなみに原題は「A Man of Parts」。直訳すると「多才な人」by 英辞郎。ここからこの邦題は本当にナイス。どうやってウェルズが多彩な作品を産み出したのが理解できる作品になっている。☆☆☆☆。

日露開戦前と辛亥革命時の陸軍参謀本部の対応を「情報戦争」の視点で政治・軍事史的に再検証する。
■参謀本部の情報活動を支えた「情報将校」の系譜を幕末にまで遡って考察
キーパーソンは川上操六陸軍大将 
■参謀本部の情報収集から政策決定までの流れを対露戦争の遂行という政治的文脈で実証
キーパーソンは福島安正陸軍大将 
■辛亥革命時、参謀本部はどのような対清情報工作を展開したのか
キーパーソンは宇都宮太郎陸軍大将 

情報戦争と参謀本部: 日露戦争と辛亥革命情報戦争と参謀本部: 日露戦争と辛亥革命
(2011/09/22)
佐藤 守男

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著者は高卒で入隊した自衛隊から防衛省事務官に転じ、退官後に北大大学院で研究者として20年間、日露関係史を専門に研究生活を送った。70代にして法学博士号を取得している。

本書は歴史ファンには欠かすことのできない、いわゆる「一次資料」に直接当たることで書かれた二次資料ということになる。我々が楽しんで読むのは三次資料。こういった地道な努力を重ねる研究者の努力のお陰で、これまで知らなかった過去の事実に触れることができるのだ。本当に頭の下がる思いである。

著者の防衛庁勤務時の担当業務は明かされていないが、本書の参考文献に英語やロシア語の資料が数多く記載されていることから、おそらく情報分析分野の業務に従事していたのではないか。本書のテーマも軍事諜報活動である。と思ったらなんと昨年この人の著作を読んでいた。
情報戦争の教訓: 自衛隊情報幹部の回想情報戦争の教訓: 自衛隊情報幹部の回想
(2012/09/07)
佐藤 守男

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本書の対象は日露戦争と辛亥革命という20世紀初頭のアジアの大事件で、日本軍がいかに情報を収集分析し、軍事行動に役立てたのかについて掘り下げている。日露戦争では、その直前に締結された日英同盟とそれに伴う軍事同盟に紙数が割かれている。軍事同盟締結に先立ち、ロンドンで武官同士が情報交換する様が一次資料から引用されている。

>「前来ノ行掛ヨリ彼我共二露佛対日英連合作戦ノ場合ヲ研究シ置クノ必要ヲ認メ作戦計画課長(此職名ハ公表セラレアルニアラス)大佐『アルタム』ト二回ノ図上研究ヲ行フタリ」

ははは。旧カナどころか、候う文である。慣れてくるとそれなりには読めるが、時間はかかる。でも二次資料なのでやむを得ない。時にはこういった資料に直接触れると、その時代についての印象は間違いなく深まる。

英国はインド、日本は中国大陸・朝鮮半島に権益を持ち、等しくロシアの南進に抵抗する立場であった。英国からはロシアの軍備についての詳しい情報が得られたため、シベリア鉄道の輸送力など日露開戦時のロシア軍の展開力もかなり予測ができていたようだ。日本の動員力を実際の半分以下に見積もっていたロシアとはかなりの情報力格差と言える。

日露戦争ではここまでやっていた日本なのに、わずか30年後の対米開戦時なはなぜ… 江戸時代の幕藩体制の人材育成の賜物か。それにしてもこの緻密な調査は凄い。同じ防衛省でも在任中の知識だけでつまらない本を書いている人もいるのに。著者の努力に敬意を表して☆☆☆。

でも定価6,090円は高い。図書館へGO!

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「社会が高齢化するから日本は衰える」は誤っている! 原価0円からの経済再生、コミュニティ復活を果たし、安全保障と地域経済の自立をもたらす究極のバックアップシステムを、日本経済の新しい原理として示す!!

里山資本主義  日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
(2013/07/10)
藻谷 浩介、NHK広島取材班 他

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自分は最近になってキャンプにはまっているのだが、当初のコンセプトは「移動式別荘」。それが妻を巻き込む口実でもあったのだが、いろんな人のblogを読んだり、アウトドアで本当はなにをしたいのか考えたりするうちに、自分のスタイルをもう少し明確にしたほうがいいのではないかというふうに思えてきた。この本を読んで、その方向性の手がかりが多少なりとも具体的に見えた気がする。

本書ではまずオーストリアの里山資本主義のお話が登場する。里山資本主義とは地元の山が自己再生する力を使って生活をしていこう、という考え方だ。小さな村であれば、森の間伐材を使えば燃料を買わなくても自給自足ができる。もう少し規模が大きくなれば、森の再生力の範囲内で木材を生産し輸出することで外貨を稼ぐ。里山という資本があることで可能になる、という意味で里山資本主義と呼ばれている。国内でも岡山県や高知県で積極的にこの取り組みがなされているようで、木材を燃料として加工した「木質ペレット」がナチュラムなどで販売されている。

最近気温が下がってきたこともあって、自分も遅ればせながらキャンプで暖をとるための焚き火に興味を覚えているのだが、キャンプ場のそばに山や林があれば落ちている枯れ枝を集めるだけで結構な焚き火が可能だ。なので、これはあの延長線上なのかな、とか思ったりして親近感が湧いた。

そして本書はさらに、地域における物々交換経済に言及していく。老人ばかりの村で、農作物も他に売るほどではないが自分で消費するには多すぎて腐っていく。そんな村で、デイケアセンターを中心に物々交換が復活し、村が活気を取り戻す。森だけでなく、畑や漁場など一次産業の資本を使いながら域内の経済を活性化させていこうという試みだ。自分が今まで知らなかっただけで、全国でいろんな取り組みがなされている。実家のすぐ近くの周防大島でも、かなり本格的な取り組みがなされているという。

自分がキャンプに行ったときの食材は可能な限り行った先のスーパーで買っているのだが、それは便利さの問題であって、その土地の作物を積極的に食べようという意識はなかった。でもこの箇所を読んで、せっかくキャンプに行ってその地域の自然の真っ只中にいるのに、その土地の作物を楽しまなかったら、単に野外で寝ているだけの観光旅行に過ぎなくなるのではないかという気がしてきた。

本書の内容に戻ると、共著者の藻谷浩介氏はこの現象を「貨幣経済万能主義によって荒廃した人の精神の豊かさを取り戻す運動」と言っている。なんでも金銭で計れるという発想に基づき、人生の目標や人のつながりまでがすべて通貨の価値で置き換えられてしまう現代では、勝者と敗者があまりにもはっきりし過ぎてしまう。人間の多様性を信じ、顔の見える範囲での経済活動を活発化させることで、人は輝きを取り戻せるのではないか。そういう内容だ。

会社での窓際生活が長い小生だけに(笑)、著者の言わんとすることはよくわかる。だからこそこの歳になってアウトドアの趣味にずぶずぶとはまりつつあるのだ。しかしその趣味へのかかわり方が従来の貨幣万能経済から抜け出せていないとすれば、結局同じむなしさを将来感じることになる。別に今の職を捨てて田舎に戻るつもりはないが、せっかくの余暇の時間を使っての趣味では、せめて少しでもこの里山資本主義に近づけないものか。(手放しで礼賛するつもりもないが)環境関連の本も結構読んでいるのだが、読むばかりでちっとも実践できていないので、せめてキャンプでなにか実践したい。

おそらく多くのキャンプ場が元農地であったものを活用しているようなので、キャンプ場を使うこと自体でも十分地域貢献できていると思うのだが、キャンプ生活の不便さをお金ですぐ解決しようとするのはもう少し慎重に考えたほうがいいのかもしれない。その点では、道具を自作しているキャンパーの皆さんは素晴らしい。それから現地で釣りをして食材を得ようとするのも素晴らしい。山に入って狩をする人はさすがに少ないと思うが。たぶん色々ヒントはあると思うので、ほかの人がどんなことをやっているのか、もっとよく見せてもらわなければと考えている。でももしキャンプにはまっていなかったらこんなチャンスはなかったはずなので、ほんとラッキーだよな。

少なくともキャンプ場の周辺をもっと歩き回ったほうがいいのかも。本としては藻谷氏のイデオロジカルな主張が少し強すぎる気がしたので☆☆☆。

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