『武士の家計簿』から九年、歴史家・磯田道史が発見した素晴らしき人々。穀田屋十三郎、中根東里、大田垣蓮月。江戸時代を生きた三人の傑作評伝。
著者は、中世の日本史を研究しながら分かりやすい文章で「武士の家計簿」などで当時の日本人の生活ぶりを紹介してきた。本書では、歴史の日が当たらない3人(組)の人物を紹介している。普通「立派な人」と言われると揶揄されているように聞こえるが、この人たちは本当に立派な人たちだ。
最初は仙台藩吉岡宿の9人組。自らの生活を切り詰めてまで、宿の反映のための基金を作った。次が中根東理という江戸中期の陽明学者。そして大田垣蓮月という歌人の尼僧。彼らに共通しているのは、周囲の人たちの幸せが自分の幸せであるという価値観を徹底して貫いた人生を送ったということ。何かを成し遂げたというのではなく、その一点において巨大な存在であったことだ。
そして3人にもう1つ共通しているのが、自らをほこらないこと。いずれも自らの事跡を書物に残していない。それゆえ、この3人の名前もなかなか知られていないのだが、著者の努力のお陰で我々は今になってこういう人が過去の日本にいたことを知ることができる。
この本の特徴は、単に題材の人物を描写するだけではなく、その時代の人たちのメンタリティがどのようなものであったのか、資料から得られる情報に基づいて描写している点だ。当時の日本人がいかに名誉を重んじ、清廉に生きようとしたのかが、生き生きと伝わってくる。
著者は「この江戸時代に培われた日本人の国民性があったればこそ、日本は維新後の世界を生き抜けた」としているが全く同感。そしてその貯金を使い果たした今、我々が国際社会でどう振る舞っていくべきなのか、これは1つのヒントかもしれない。☆☆☆☆☆。
無私の日本人 (2012/10/25) 磯田 道史 商品詳細を見る |
著者は、中世の日本史を研究しながら分かりやすい文章で「武士の家計簿」などで当時の日本人の生活ぶりを紹介してきた。本書では、歴史の日が当たらない3人(組)の人物を紹介している。普通「立派な人」と言われると揶揄されているように聞こえるが、この人たちは本当に立派な人たちだ。
最初は仙台藩吉岡宿の9人組。自らの生活を切り詰めてまで、宿の反映のための基金を作った。次が中根東理という江戸中期の陽明学者。そして大田垣蓮月という歌人の尼僧。彼らに共通しているのは、周囲の人たちの幸せが自分の幸せであるという価値観を徹底して貫いた人生を送ったということ。何かを成し遂げたというのではなく、その一点において巨大な存在であったことだ。
そして3人にもう1つ共通しているのが、自らをほこらないこと。いずれも自らの事跡を書物に残していない。それゆえ、この3人の名前もなかなか知られていないのだが、著者の努力のお陰で我々は今になってこういう人が過去の日本にいたことを知ることができる。
この本の特徴は、単に題材の人物を描写するだけではなく、その時代の人たちのメンタリティがどのようなものであったのか、資料から得られる情報に基づいて描写している点だ。当時の日本人がいかに名誉を重んじ、清廉に生きようとしたのかが、生き生きと伝わってくる。
著者は「この江戸時代に培われた日本人の国民性があったればこそ、日本は維新後の世界を生き抜けた」としているが全く同感。そしてその貯金を使い果たした今、我々が国際社会でどう振る舞っていくべきなのか、これは1つのヒントかもしれない。☆☆☆☆☆。