量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

カテゴリ: >た行(ノンフ)




エマニュエルトッドの話題作をついに読んだ。
最近ブログにはほとんど個別の読書記録を上げてないが、
これはちょっと記録のために上げておいたほうがよさそう。

トッドの本は以前「アラブ革命はなぜ起きたか」を読んだのだが、
そのときは何やらどっちつかずの議論が多いなあという印象。
一杯論点をちりばめて、そのうちのどれかが正しいでしょみたいな。

しかしながら本作では中世以降のヨーロッパがドイツから受けた
さまざまな影響を振り返り、ヨーロッパにおいてドイツが持っている
ネイチャーを万人が納得するように整理している。

なるほど感があったのは、ウクライナの位置づけ。
東欧・旧ソ連諸国の中には、もともとロシアと仲が悪い国も多い。
特にウクライナは第二次大戦前はスターリンに抑圧されていて、
ドイツが侵攻してきたときは大喜びで迎え入れたんだった。

だから、ソ連が反攻してウクライナを回復したとき、
ナチスシンパが随分とソ連兵に処刑されたらしい。
それを考えると、ウクライナが現在親西側諸国になってるのも肯ずける。

もう一つはドイツ、ロシアとイギリス、アメリカの関係。
これは言うまでもないが、もともと不可侵条約を結んでいたソ連に
ドイツが突然侵攻し、それをイギリス、アメリカが助けたという経緯がある。

(トッド曰く)ユーロを我が物にしようとしている現在のドイツに対して、
ロシアはアメリカと大同しないと立ち向かえない。
その意味では、シリア情勢は非常に重要だ。

って、まさに先々週から起きていることじゃないか。
今回ばかりは全体の流れを読むことに長けたフランス人をほめないと。
トッドによればそもそもヨーロッパを単一通貨で縛ろうというのが間違いらしい。
そうはいっても今更元に戻すのはかなり難しいぞ。

9.11 の衝撃以降、アメリカはテロとの闘いを「戦争」と呼び、それに関するあらゆる情報を機密扱いにする
ことを正当化してきた。政府機関のみならず民間機関も組み込まれた機密情報機関網は、莫大な予算が注ぎ
込まれて巨大な規模に膨れあがり、情報は錯綜し重複し、統御の限界を超えて機能不全に陥っているという。
その実態はどうなっているのか。長年にわたって米国政府の機密情報を取材してきたワシントンポストの敏
腕記者による衝撃的なレポート。


トップ・シークレット・アメリカ: 最高機密に覆われる国家トップ・シークレット・アメリカ: 最高機密に覆われる国家
(2013/10/23)
デイナ プリースト、ウィリアム アーキン 他

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肥大化し意志疎通が取れなくなった対テロ組織、その非効率さに付け込んで金をむしりとる軍需産業、戦争の名の基に侵略行為を繰り返す特殊作戦軍。この結果がネオコン一党の狙いだったとすれば、まさに狙い通り。米国の景気はまさに国費で賄われている。

かたや先日読んだ「政治の代償」、原題は「Price of politics」。財政の崖を乗り越えるために、オバマ大統領があらゆる犠牲を払う姿が描かれているが、あれはこんなもののために支払った代償だったのか。国を食い物にしているという意識は薄いかもしれないが、そうだとすればただのハイエナである。


政治の代償政治の代償
(2013/11/21)
ボブ・ウッドワード

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そして今また、米国の債務上限問題が持ち上がっている。それを受けて米国株は日々乱高下。うまくやったものが富み、要領の悪いものは沈む。アメリカ人が好きな実力主義に私が違和感があるのはこういうところなのだ。

この2冊をセットで読むと、とてもではないがドル建て資産は持てない。「トップシークレット…」は☆☆☆☆。訳注もかなり面白い。「政治の…」は冗長すぎて☆☆☆。政治とはそもそも冗長なものかもしれないが。

1時間60本ノルマの入金要請の電話をかければ、お客さまからの罵声、怒声、脅しのオンパレード…。人見知りで話しベタで気弱なOLが、年間2000億円の債権を回収するまで。超ストレスフルな仕事の乗り越え方。

督促OL 修行日記督促OL 修行日記
(2012/09/22)
榎本 まみ

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来週はいよいよ館山若潮マラソンなのだが、そろそろタイム設定をしなければいけない。松戸ハーフのタイム×2+10分だと3時間23分。5キロを24分で走ると3時間23分弱。やはりこれか。

1kmあたりの目標設定にしてしまうと、道中で何度も42倍する計算が必要になるので、設定は5キロ単位が便利だ。本当は5キロ25分ちょうどで3時間半なのだが、それだとバッファーがなくなるのでこのくらいが丁度よい。キロだと4分48秒。頑張ります!!




さて本書だが、軽めのタッチで書いてあるが、顧客接点を持つビジネスマンの方々にお勧めである。自分は以前Web関係の業務に就いていたことがあり、そこはコールセンターとワンセットだったので結構生々しく思い出すものもある。

本書はblogをベースにしたものらしく、著者は今もコールセンター業務のかたわら、blogの更新を続けている。少し覗いてみたが、元気に仕事をされているようで何よりだ。本書にも書かれているように、コールセンターのクレーム担当の仕事は大変だ。自分もヘルプで少しだけ受けたことがあるが、袋小路に追い詰められた気分になる。こんな風に工夫しながら乗り切っていくのはすばらしい。

いちばん響いたのは「自尊心を埋葬しろ」という言葉。まあビジネスマンなら当たり前かもしれないが、顧客との関係だけでなく、上司との関係においても非常に大事だ。50歳近くになってもこれが理解できないで、上司に反抗的な口をきく人は多い。別におもねる必要はないが、必要に応じてへりくだろうよ、と思うし、言う。それが伝わらないときは「突っ張ることが男の~たったひとつの純情~♪」と心のなかで口ずさむことにしている(笑)

たまにはこういう本もよい。☆☆。

歴史の常識は覆された!

大東亜戦争に対する日本の基本戦略は、
東南アジアの資源地帯から米英蘭勢力を駆逐した後は、
対米、すなわち太平洋は防御、
攻勢の主方向は、インド洋と中国だった。
この基本戦略通りに戦ったならば、
日本が負けることにはなり得なかった——
米国人歴史学者が検証した
“太平洋戦争の真実"
には、日本人が大東亜戦争を見直す際の教訓に溢れている。


「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか (WAC BUNKO)「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか (WAC BUNKO)
(2013/12/11)
ジェームズ・B・ウッド

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先日妻と電車に乗っているときにスマホをみながら「この写真をblogに載せたいんだよね」といったところ「こんなところでそんな話やめて」と言われた。妻の中でブロガーに反社会的勢力のフラグが立っていることが確認できた瞬間(泣)

年末の休みに入り色々と家事をこなしているが、今日は先日刈り取った黒豆を収穫。畑からまるごと持って帰りベランダで干していたが、採れる状態になったようだ。



これで今年はおせち料理の黒豆に(妻が)挑戦♪



さて、明日と明後日は2日間にわたり今年のアウトドア・インドアの振り返りをやる予定なので、いわゆるレポは本日が年内最後。にも関らずこのチョイスはいいのか・・・

本書はよくある「架空戦記」とはことなり、太平洋戦争の各局面で日本に他の選択肢はあったのか、その選択肢をとっていたら時間軸に変化はあったのか、という本。実際最近になって、原爆投下が欧州での英露の関係悪化にともなうソ連に対する威嚇だったことが明らかになってきており、その意味で例えばサイパン陥落が1年、あるいは半年でも後ずれすればポツダム会談の時期や中身が大きく変わってきていた可能性は高い。その場合は、英米はソ連に対する防波堤として日本との講和を進めていた可能性もある。実際、朝鮮戦争勃発によりそうなったことは事実。

筆者が主張している「他の選択をとりえた局面」でリーズナブルと思えるのは以下の5点。
①日本商船隊において護送船団方式を採用していたら、国内の資源欠乏の時期はもっと遅くなった。
②艦隊を逐次投入せず、ポイントとなる戦闘に集中投入していたら、レイテ島の陥落はもっと遅かった。
③陸軍を膠着していた中国戦線からマリアナ諸島にもっと早期に投入していたら、サイパン島で硫黄島並みの防衛体制を築け陥落時期を遅らせられた
④潜水艦隊を連合国の艦隊攻撃や輸送に使うのではなく、連合国の補給線破壊に集中すれば攻勢に歯止めを掛けられた。

かなりうなずける箇所が多い。先日読んだポール・ケネディの「第二次大戦影の主役」では本書に対する反論が書かれているのだが、本書がこれらの策により日本が勝ったと主張しているわけではない以上、批判はあまり当たっていない。P-51とB-29の登場は確かに米国の戦略に大きな影響は与えたものの、サイパン・テニアンが陥落しない限りこれらの新兵器も使えないわけで、そうすると昭和20年3月の東京大空襲は半年後になっていただろうし、そうすれば対独戦が終了しいよいよ東欧で覇権を発揮し始めたソ連に対する米英の警戒感も高まってきていた可能性は十分にある。さらにはこれらの島々での犠牲の大きさに米国内で厭戦気分が蔓延したかもしれない。

天皇の権限についての誤解のある表現や、特攻隊が有効な戦法だと評価しているので本書が日本で全面的に受け入れられることは無いだろうし、作者にはその気はなくても反東京裁判史観丸出しの訳者は本書にやたら共感してるらしく香しい訳注をバンバン入れてくれて、そんなに偏った人が翻訳していいのか?という気になるのだが、読む意味は十分にある本。でも私が街中でこの本を読んでいる人を見かけたら「あっ、偏向してる」って思うんだろうなあ(笑)。☆☆☆。

『大国の興亡』の著者が
第二次世界大戦を斬新な視点で描く!
連合国勝利の根幹には、これまで語られなかった人々の存在があった――。当代最高の歴史家の一人ポール・ケネディが、軍、民間、研究機関といった組織内部で「大戦略」を実行してきた現場に焦点を合わせ、その活躍と技術革新、戦略思想の変遷を描いた全く新しい大戦史!

チャーチル、ルーズベルト、合同幕僚会議の面々が参集したカサブランカ会談において、敵国に無条件降伏を呑ませるという連合国の「大戦略」が決定された。この大戦略を達成するには、ナチスドイツの電撃作戦へ対抗し、大西洋海上交通路を支配し、ヨーロッパ西部から中部にかけての制空権を確保し、日本の帝国主義を打破しなければならなかった。歴史を振り返れば、カサブランカ会談が自動的に枢軸国の無条件降伏につながっているかのように見える。事実、1年足らずのあいだに作戦目標はほぼ達成されたからだ。

しかし、実際の戦況は悪化の一途を辿っていた。連合国はUボートの脅威によって大西洋の制海権を失いかねない状態だった。ドイツへの戦略爆撃は奏功せず、英米の航空部隊は手痛い打撃を被っていた。また太平洋における日本軍との戦いにおいても、難問が立ちはだかった。カエル跳び作戦を実行するには、環状サンゴ礁の島に上陸しなければならない。だが敵が堅守する海岸線に上陸する手段を、米軍は持ち合わせていなかった。

このころ、連合国が克服しなければならなかった難題は山のようにあった。では1943年のはじめから1944年半ばにかけて、形勢を急転させた戦略、作戦・運用、戦術とは何だったのか? 若き日にリデル・ハートの名著『第二次世界大戦』のリサーチャーとして研究を行ったポール・ケネディが、トップリーダーを研究した師とは違った観点から新しい戦史の方向性を打ち出した大作。



第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち
(2013/08/24)
ポール・ケネディ

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原題はEngineers of Victory。「勝利の技術者たち」というところか。文字通り、連合国を勝利に導いた技術者たちの努力の数々に光を当てた力作。著者はしきりに、何か一つのスーパー兵器、スーパー技術者のおかげで勝ったのではない、総合力で勝ったのだということを強調する。その前提として、米英間で枢軸国打倒に向けた大戦略が合意されたところから本書は始まる。

1943年1月にジブラルタルにルーズベルトとチャーチル、および米英の軍事指導者たちがジブラルタルに集まり、会議を行った。ここで決められた戦略は、具体的には以下の3要素。

①英国への輸送の確保
②英国の対独攻撃拠点化
③戦闘の欧州大陸内陸化

要するに、アメリカから英国へ物資をどんどん送り込み、そして英国を不沈空母と化し、アフリカからドイツ軍を追い出し欧州大陸に閉じ込める。

これを理解するだけでも本書を読んだ価値があろうかというものだ。会議があったのは43年の初頭。この直後に、パットン将軍がアフリカ戦線に投入される。連合軍のドイツ爆撃やロシアへの武器供与も本格化する。大西洋でのUボートとの戦いも、大幅な戦力増強により形勢が逆転していく。

著者は北大西洋でのUボートとの戦い、ドイツ上空における制空権確保、地上戦でのドイツ電撃戦への対抗、ノルマンディ上陸作戦を例に挙げ、それらを成功に導いた要素としてヘッジホッグ(爆雷の一種)、P51(長距離戦闘機)、T34(ソ連最強の戦車)を挙げている。太平洋戦争では、アメリカ海兵隊、高速空母群、B29、海軍工兵大隊の登場が日本を決定的に窮地に追い込んだ、と説明している。

確かにこれらの兵器、兵員は枢軸側にはなかったものだ。この差について著者は巻末で「欧米には“奨励の文化”があり、これが新兵器を生み出す原動力になった」と締めている。日本やドイツにも奨励の精神はあったと思うが、それが活かせるかどうかは国力の余裕の成せる技ともいえ。ここについてはあまり深い掘り下げがなかったのは残念。

しかし米海軍工兵大隊(Comstruction Batarion、略称CB)が総勢32万人もいてその8割が太平洋戦線に展開していたとは驚いた。テニアン陥落後すぐにB29が飛行可能になったのもこのCBの働きによるものだ。その中にはニューヨークで摩天楼を作った人や、イーストリバーに橋をかけた人など極めて専門性の高い人もいたらしい。日本だと、そんな経歴には目もくれずただの歩兵にしてしまっただろうから、まさにEngeineers of Victoryのタイトルにふさわしいではないか。

エピソード集としては面白いが、国力の差が人の使い方にどう影響したのか、その技術が実際の戦場でどんな活躍をしたのかの面はちょっと物足りないかも。☆☆☆☆。

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