量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

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第1次世界大戦は終結に向かい、ロシアでは革命が起き、そして罹患すれば死にいたるスペイン風邪(インフルエンザ)が流行の兆しを見せる1918年。ボストン市警察の若き巡査ダニーは、労働組合を結成しようとする警官たちの急進グループへ潜入捜査を命じられる。同じ頃、遠く離れたオクラホマで殺人を犯してしまった黒人青年ルーサーは、追手を逃れるためボストンへとやってくる。二人の青年の人生が思わぬ形で交錯する時、時代のうねりは発火点を迎える!   「ミステリが読みたい!」海外ベスト・ミステリ(2008)第1位/「このミステリーがすごい! 2008」ベストテン 海外編第3位/「週刊文春ミステリーベスト10」海外部門第5位

運命の日(上)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕運命の日(上)〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
(2012/03/05)
デニス・ルヘイン

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妻のインフルエンザもほぼ治癒したのでようやく通常ペースの生活にもどりつつあるのだが、肝心の自分の体調が微妙だ。微熱ではないのだが、なんとなく咳が残っている感じ。昨日の午後、久々に走ったのだが、復活と呼べるにはもう少し時間がかかりそう。しかしあせってもしょうがないのだ。次の大会は3月16日なのでもう一ヶ月を切っているのだが、ここで風邪をひいたのもめぐり合わせなので。

山梨が積雪でヤバイらしい。交通も途絶し食糧供給が危機に瀕しているという情報もある。キャンプは不便さを楽しむ遊びだが、本当に世の中が不便になると少し後ろめたくもある。行き帰りは自動車だし。こういう状況を見ていると、自分で担げる範囲の道具で野外生活するというスタイルのキャンプの経験も必要ではないかと思ってしまうな。



さて、そんなわけで昨日は4冊も本を読んでしまったのだが、その一冊がこちら。あの「ミスティック・リバー」を書いたルヘインが描く、禁酒法前夜のボストン。以前確かハワード・ジンの本でも読んだが、この頃の米国はロシア革命の影響により激しく不安定化しておりデモやストが頻発、ボストンでも警官のストを発端にした大規模暴動があったらしい。その警官ストのリーダーが本書の3人の主人公のうちの1人。もうひとりは1人は賭博組織内のトラブルで追われる黒人、もう1人が当時レッドソックスからヤンキースに移籍したベーブ・ルースだ。物語は大きな時代のうねりの中、彼らがいかに自分の信念を貫こうとしたかを描いている。

彼らの人生を縦軸にして、横軸に当時の世相、社会主義活動や人種差別、インフルエンザ(スペイン風邪?)の流行などが描かれるのだが、ルヘインの描く登場人物はいずれも情感にあふれ、自分の生きる意味を正面から問う。必ずしも理想は実現できないのだが、そのもがく姿がリアルだ。ただ一方で、人物の善悪がはっきりしすぎているので、分かりやすい物語を求める向きにはお勧めだが、マッカーシーと比べると物足りない気もするな。そこは個人的にはマイナス。でもワクワク感は十分。ミスティック・リバーも読んでみるか♪ インフルエンザ流行の描写が、今の自分の状況に照らしてリアルすぎて怖かった(笑)☆☆☆☆。

ストックホルムにあるアパートの一室で、鞭打たれて意識を失った売春婦が発見された。リトアニアから連れてこられたという売春婦は、すぐに病院に搬送され、彼女を連れてきたポン引きも国に強制送還され、事件は簡単に片付いたかに見えた。だが、病院で目覚めた売春婦の予想外の行動が、単純だったはずの事件を、スウェーデンの闇をえぐる大事件へと発展させてゆく…。『制裁』に続く、北欧発の衝撃的クライムノベル。


ボックス21 (ランダムハウス講談社文庫 ル 1-2)ボックス21 (ランダムハウス講談社文庫 ル 1-2)
(2009/04/10)
アンデシュ ルースルンド、ベリエ ヘルストレム 他

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昨日の記事で凄く大切なことを書き忘れていたので修整。今回のエンデューロでは、他のチームは1時間半なのレースを3人交替で走っていた!! これに悶さんはなんと一人で対抗して入賞したわけで、もはや人間業ではない。昨日の記事もその旨追記します。



今日は今度は妻が発熱、インフルエンザの可能性ありということで午前中は会社を休んで家事にいそしんだ。こういう時は、ユニフレームのライスクッカーよりも電子炊飯器のほうがええなぁ~(^^;
しかし息子よ、俺の味噌汁が飲めんのか?(笑)



結局妻はインフルエンザだったのだが、ああ、このまま会社サボりてえ~(笑)
息子は涙目で完食(笑)



北欧での薬物犯罪の実態を赤裸々に描いた最新作「三秒間の死角」と同様、北欧の売春・人身売買をテーマにしたサスペンス。今回は主人公のグレーンス刑事がなぜ恋人を失ったのかの経緯も明らかになる。

とにかく犯罪の実態についての描写がリアルだ。リトアニアからスウェーデンに連れてこられる少女たちと、その手口。24時間監視付きの売春宿。そして警察内部にまで及ぶ腐敗。元犯罪者が共著者だけのことはある。

「三秒間の…」ほどのスピード感はないが、読後の後味の悪さ、事件が解決しても犯罪は無くならない無力感など、作者の力量がうかがえる一作だ。☆☆☆☆。

犯罪組織の中枢にまで潜り込んだスウェーデン警察の潜入捜査員パウラ。組織に与えられた任務は、刑務所内に麻薬密売の拠点を作ることだった。秘密裏に政府上層部のお墨付きを得たパウラは、巧妙な手段で麻薬を所内に持ち込み、ライバル業者を蹴落として商売を始めた。だが、パウラの正体を知らないまま、入所前に彼がかかわった殺人事件を捜査するグレーンス警部の追及の手が迫るのを知った政府上層部は非情な決断を下す…。英国推理作家協会(CWA)賞受賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞受賞。

三秒間の死角 上 (角川文庫)三秒間の死角 上 (角川文庫)
(2013/10/25)
アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム 他

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いやー、久々にストーリーだけで読ませるミステリーに出会った。スウェーデン警察内部の腐敗と潜入捜査が題材なのだが、共著者が過去に犯罪歴のある刑事施設・更生施設評論家。犯罪者と裏切り者の心理描写がリアルで、密告者”パウラ”の緊張感が手に取るように伝わってくる。それゆえ、ストーリーそのもののリアリティが高まっていて、自分がその場にいるかのようだ。また人物造形も興味深い。家族のために懸命に生きようとするパウラと、絶望に苛まれ仕事で人生から逃げるしかない刑事グレーンスの対比が凄い。パウラの執念が死の恐怖を増幅させて見せてくれる。

あとがきで著者がスウェーデン警察の実態について少し触れているが、そもそも密告や潜入捜査が刑事捜査の軸になっているようで、それが腐敗の温床にもなっているようだ。登場人物のうち実在しない人物のリストが最後に書かれていて、グレーンス刑事はリストに入っているのだが、パウラの名前がそこに無い。 実在するということか?!

全体に漂うけだるい雰囲気は北欧ならでは。グレーンス刑事と若い検事のやりとりも彩りを添える。今年はこれを越えるミステリーは登場するのか? 文句なし☆☆☆☆☆。
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今まで誰もここまで描けなかった
可笑しくて、切なくて、100%リアル!
中国の大ベストセラー小説、初邦訳

本書『上海、かたつむりの家』は、大都市・上海で生きる男女4人の可笑しくも切ない夢と現実、希望と挫折の物語です。
貧富の拡大、拝金主義、土地の高騰、住宅問題、官僚の汚職、不倫・愛人問題、ローン地獄……など、
普段のニュース報道ではなかなか見えてこない現代中国の都市──上海──で暮らす中国人の苦悩が赤裸々に描かれています。
どんなノンフィクションよりもリアルな、等身大の現代中国人の“今"を知るために最適な作品です。

上海、かたつむりの家上海、かたつむりの家
(2012/08/30)
六六

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作者の名前の六六って、荒川良々みたい(笑

田舎から出てきた姉妹が、大都会上海で体制や経済に翻弄されながら生きていくお話。上海における住宅事情の悪さがすさまじい。地価狂乱時の日本でもここまでではなかったか。「それでも家を買いました」を思い出したが、本作はそれだけではなく、中国の権力構造、利権構造にまで踏み込む。

内容自体はたわいもないメロドラマだが、これが韓国ではなく中国で書かれて、しかも発禁になったことに意味があるのではないかと。
☆☆☆。

いつも読んでいただいてありがとうございます。
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