政府に弾圧され続けるトルコの少数民族の言語と、その生活の実態を、スパイと疑われながら、調査し続けた著者。前著『トルコのもう一つの顔』(中公新書)が、まるで推理小説のようなスリルに満ちた物語と、著者の少数民族に対する愛情に涙が出たと絶賛され、長らく続編が待望されながら20年。前著でトルコを国外追放されたあと、再びトルコへの入国を果たし、波瀾万丈のトルコ旅行が開始される。著者の並外れた行動力と、深い知識、鋭い洞察力が生み出した画期的トルコ紀行。
平成2年に出版された「トルコ もう一つの顔」、その続編の「漂流するトルコ」、いずれもトルコの言語を長年研究してきた小島剛一氏がトルコに数多くいる民族とその言語をライフワークとして現地を丹念に調査し、現地当局と戦ってきた記録である。トルコはごく最近まで、国内でのトルコ語以外の使用を認めていなかったし、存在すら否定していた。
言語を否定することは民族を否定することだ。クルド人はトルコ国内にはいないことになっていたらしい。そういえばトルコとの国境近くのイラクでクルド人が迫害された時に、日本でもあたかもトルコ側にはクルド人がいないかのような報道がされていたのを思い出した。
本書でもう一つ目に付くのは、現地当局関係者のあまりに傲慢な振る舞いと、それに対して少数民族のあまりに誇り高い行動の落差だ。当局関係者のなかにも少数民族出身者がいるのだが、彼らが当局の方針に反して筆者に暖かく接する場面からは、彼らがトルコ国内で置かれた立場がリアルに伝わってくる。
先日読んだ井上ひさしの本で「人はある年齢までに母語を習得し、その言語で思考するようプログラムされる」といった趣旨のことが書かれていた。最初にものを考えるようになった言語は、その人のアイデンティティそのものを支配するのだ。だから民族は自分の言語にこだわるのだ。その言葉を禁じられることに抵抗するのだ。
著者はそのことを理解できる人とできない人を徹底的に区別する。たかが言語などといってその重要性を理解できない者はみな敵だ。ほとんど言いがかりではないかというほどの勢いで、敵に対してはどんどん食ってかかる。「トルコ もう一つの顔」では出版社の勧めもありその辺の怒りの表現はかなりマイルドになっているらしいが、新作ではもうあからさまである。
その辺を割り引いて考えても、本作はトルコと言う国が実は警察国家であり、内部では様々な感情がうごめいているであろうこと、さらには他の国においてもおそらく同様に迫害されているであろう少数民族が、どんな迫害を受けているのかを赤裸々に語ってくれる本である。いわゆる先進国ではない国への旅行の趣味のある人は必読だ。☆☆☆☆☆。
そういえば、読書メーターに本書のレビューを書いたからだと思うのだが、作者ご自身にこのブログをご覧いただいたようだ。あまりに中身がないので、一度きりだったが(笑)
漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」 (2010/09) 小島 剛一 商品詳細を見る |
平成2年に出版された「トルコ もう一つの顔」、その続編の「漂流するトルコ」、いずれもトルコの言語を長年研究してきた小島剛一氏がトルコに数多くいる民族とその言語をライフワークとして現地を丹念に調査し、現地当局と戦ってきた記録である。トルコはごく最近まで、国内でのトルコ語以外の使用を認めていなかったし、存在すら否定していた。
言語を否定することは民族を否定することだ。クルド人はトルコ国内にはいないことになっていたらしい。そういえばトルコとの国境近くのイラクでクルド人が迫害された時に、日本でもあたかもトルコ側にはクルド人がいないかのような報道がされていたのを思い出した。
本書でもう一つ目に付くのは、現地当局関係者のあまりに傲慢な振る舞いと、それに対して少数民族のあまりに誇り高い行動の落差だ。当局関係者のなかにも少数民族出身者がいるのだが、彼らが当局の方針に反して筆者に暖かく接する場面からは、彼らがトルコ国内で置かれた立場がリアルに伝わってくる。
先日読んだ井上ひさしの本で「人はある年齢までに母語を習得し、その言語で思考するようプログラムされる」といった趣旨のことが書かれていた。最初にものを考えるようになった言語は、その人のアイデンティティそのものを支配するのだ。だから民族は自分の言語にこだわるのだ。その言葉を禁じられることに抵抗するのだ。
著者はそのことを理解できる人とできない人を徹底的に区別する。たかが言語などといってその重要性を理解できない者はみな敵だ。ほとんど言いがかりではないかというほどの勢いで、敵に対してはどんどん食ってかかる。「トルコ もう一つの顔」では出版社の勧めもありその辺の怒りの表現はかなりマイルドになっているらしいが、新作ではもうあからさまである。
その辺を割り引いて考えても、本作はトルコと言う国が実は警察国家であり、内部では様々な感情がうごめいているであろうこと、さらには他の国においてもおそらく同様に迫害されているであろう少数民族が、どんな迫害を受けているのかを赤裸々に語ってくれる本である。いわゆる先進国ではない国への旅行の趣味のある人は必読だ。☆☆☆☆☆。
そういえば、読書メーターに本書のレビューを書いたからだと思うのだが、作者ご自身にこのブログをご覧いただいたようだ。あまりに中身がないので、一度きりだったが(笑)