量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

カテゴリ: >あ行

残念ながら金メダルを逃した吉田沙保里。
あんなに申し訳ないって謝って、もう見てられない。
今回が銀だからってこれまでの偉業が何ら損なわれることはないって、
人間なんだからたまには負けることだってあるんだよって、
カラダを張って伝えたい。






こんな感じで。
023
右手がちゃんとマットをたたいてる(笑)










☆☆


今日は大阪からりょうたさんをお迎えしての歓迎会。
お土産ありがとうございました。

りょうたさん、こんな人だった。
りょうたさん


クレームは受け付けません(笑)




☆☆


久々のドッカン(読書感想)更新。

みなさんは「LAコンフィデンシャル」っていう映画をご存じだろうか。
ケビンスペイシー、ラッセルクロウ、キムベイシンガーなどのオールスターキャストで
いまや名作の誉れ高い。あいにく「タイタニック」のせいでオスカーは逃したが。

原作はジェイムズエルロイの「LAコンフィデンシャル」。
LA四部作と言われる作品群の第三作だ。
(1作目「ブラックダリア」、2作目「ビッグノーウェア」、4作目「ホワイトジャズ」)

LAコンフィデンシャル〈上〉 (文春文庫)
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋
1997-11

ブラック・ダリア (文春文庫)
ジェイムズ・エルロイ
文藝春秋
2016-05-28

ビッグ・ノーウェア〈上〉 (文春文庫)
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋
1998-11

ホワイト・ジャズ (文春文庫)
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋
2014-06-10



「グレートギャツビー」のフィッツジェラルドとおなじく退廃ムードが漂うが、
エルロイはそこにさらに暴力を加える。しかも強烈に。

数年前、この2作目までは一度読んだことがあったんだが、
今度この4部作の前時代に位置するシリーズがまた始まった。
背信の都 上
ジェイムズ エルロイ
文藝春秋
2016-05-28

図書館で順番待ちの時間を利用して、予習のために改めて4作通して読んでみた。

1作目では近しいものの犯罪を覆い隠すために消えていく警官、
2作目では悪の黒幕に自らの本性を暴かれて滅びる警官たち、
3作目では反発しあいながらも巨悪に力を合わせてたちむかう警官たち、
4作目ではついに巨悪に鉄槌を加える悪徳警官。

時代が第二次大戦直後からベトナム戦争直前までの、
アメリカが冷戦におびえながらも平和を享受した頃が背景であり、
作中では悪者も悪玉も(善玉はいない)、どこか享楽的で
あっけらかんとしている。

特に巨悪の存在が一作ごとに明らかになっていくことで、
読み手に何ともまがまがしい毒を浴びせてくるのがたまらない。
究極のピカレスク物である。

ちなみにこれに続く「アメリカンタブロイド」「アメリカンデストリップ」
「アンダーワールドUSA」っていう3部作がある。
これはケネディ大統領、ケネディ司法長官、キング牧師の暗殺、
ウォーターゲイトなどアメリカのドロドロ暗部を掘り起こしている。
読み終わった後の不快感は格別だ。




なお、もし読むなら登場人物をいちいちメモすることをお勧めする。
登場人物は各作品とも最初の100ページで30人は下らない。
ちなみに4作通して読むと2800ページ強。登場人物は多分200人以上。
自分はこのように、ポストイットにいちいち初めての登場ページとともに記録しておいた。
DSC_4851


こうしておかないと、先々なにかの拍子に何の遠慮もなく
以前の登場人物が登場したり、あるいは登場人物の話に名前が登場したりする。
しかもそれが重用だったりする。

そんな苦労はあっても、とにかくエルロイは読ませる。
ぬるいサスペンスとか読んでいられなくなる。
だれも信用しちゃいけない、誰が裏切るかもわからない。
例え裁判官だって、神父だって、心に暗い場所を隠しているのだ。

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もっとアメリカの暴力と退廃を読みたければ、
もう一人お勧めなのはコーマックマッカーシー。
映画「ノーカントリー」の原作「血と暴力の国」とかもうたまらん。
血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)
コーマック・マッカーシー
扶桑社
2007-08-28

父と息子の狂おしいまでの愛情を描いた「ザ・ロード」。
アメリカの小説ではこれが最高傑作だと思います。
ザ・ロード
コーマック・マッカーシー
早川書房
2008-06-17



島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、〈神の沈黙〉という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。

沈黙 (新潮文庫)沈黙 (新潮文庫)
(1981/10/19)
遠藤 周作

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佐倉マラソンに向けてテーパリング中で暇なので、久々に読書記録など。読書のかなりの部分は読書メーターに任せてしまったのだが、時々こういう個別に書いておきたい本が出てくる。

本作は1966年の谷崎潤一郎賞受賞作なので、もう半世紀近く前の作品なのだが、いまだもって問題作と呼べる内容だと思う。テーマは重い。日本人にはなじみが薄い神の存在を問う内容。同時に日本人がいつまでも釈迦如来と聖母マリアを混同して信仰しているという指摘も生々しい。来世で報われるという仏教的浄土信仰と、現世で幸せになるというキリスト教的発想のことを指している。十字架に向かって祈りながら「成仏できますように」と言っているわけだ。

一方でパードレ・ロドリゴは、宗教観のちがう日本人が次々と自分の信仰に殉じるのを見て、これまた「神はおわすのか」という苦しみにあう。死んだほうが幸せになれるという発想で次々に死ぬ人には神も手を差し伸べられないのではないのか。しかし、目の前の解消されない民の苦しみをみていると、神の存在を疑う気持ちにもなるだろう。

そして最後にはロドリゴ自身も死に救いを求め始める。環境とは恐ろしい。日本に来る前のロドリゴであれば、生き延びていさえすれば神が救ってくれると思っていたはずだ。ロドリゴは生き延びて使命を全うしようとするのか、あるいは来世に浄土を見たのか。ベースの宗教観のずれをたくみに利用した遠藤周作の傑作だ。☆☆☆☆☆。

大森署管内で大物国会議員が失踪した。発見された運転手の遺体、そして謎の脅迫電話。舞台は横須賀へ移り、警視庁と反目する神奈川県警との合同捜査を署長・竜崎伸也が指揮することに。迷走する捜査の行方は―。白熱度沸点の最新長編!

宰領: 隠蔽捜査5宰領: 隠蔽捜査5
(2013/06/28)
今野 敏

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人気シリーズの第5作目。最近テレビでも放映しているせいか、我がblogにも検索ワード「隠蔽捜査 ネタバレ」が数多くヒットするようになった(笑) 今日はドラマの放映日だから新型五徳のフィールドテストレポよりも先に上げる(キッパリ)

前回は外務省と警察庁の縄張り争いがポイントとなったが、今回は警視庁と神奈川県警の確執を軸に物語が展開していく。そしていつもながらに、常に原理原則を重んじ、事件解決のためには争いをいとわない主人公・竜崎。目的のために正論を貫き通す姿は、サラリーマンの目から見て胸がすく想いがする。宰領という言葉は普段あまり耳にしないので調べてみた。

デジタル大辞泉 宰領の用語解説 - [名](スル)1 監督すること。取りしきること。また、 その役。「請負工事を―する」「家事一切を―する」

今回は一警察署長の立場ながら、神奈川県警内に設置された捜査前線本部の副本部長を任された主人公が、さまざまな組織内の軋轢を乗り越えて事件解決に向かう様が描かれている。副本部長といいながら実質的に捜査を全面的に仕切っており、それを以ってこのタイトルが付けられたものと思われる。

もうなんだか水戸黄門を楽しみにする老人みたいな心境である。ワンパターンでもかまわない。読んですっきりすることが大事だ。どんな状況に陥っても、原理原則を貫くことで窮地は脱することができることを示し続けて欲しいもんだ。作者も多分、シリーズを終える切っ掛けを失っているように思えるし(笑)☆☆☆☆。

古希をまたぎ自転車を始めた面白いことの大家・伊藤センセーの超絶エッセイ。 10キロでお尻がミンチだったのがお仲間を引き連れ北海道ツアーにまで。 待望のライブラリー化。 喜寿でもこぐこぐ。


こぐこぐ自転車 (平凡社ライブラリー)こぐこぐ自転車 (平凡社ライブラリー)
(2011/01/08)
伊藤礼

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作者は小説家・伊藤整の息子で英文学者の伊藤礼氏だ。父がわいせつな箇所を伏せ字にして翻訳した「チャタレイ夫人の恋人」を伏せ字を復活させて再版したことでも有名だ(笑)

氏は日大の教授をされていたのだが、定年退官間際になって突然自転車に目覚め、自転車で走る気持ち良さにのめり込み、本作執筆当時で6台もの自転車を持っていたという、まさにマニア。本作ではお住まいの井の頭線沿線周辺をポタリングしたり、北海道にお仲間と遠征したりしているのだが、その文章のスタイルがなんとも軽妙洒脱で、自分が好きな自転車の話題ということもあるのだが、さすがは伊藤整の息子なかなかやるなと思し っていたら、なんと過去に第7回講談社エッセイ賞を受章されている。因みに第1回は野坂昭如と沢木耕太郎。

実は本作は今回で読むのは二度目。一度目はちょうど一年前で、自分も自転車にズブズブとはまり始めているときだった。自転車を買って闇雲に走り回ってみたものの、やはりスタイルを決めるのが大事だなあと思い読んだ本のうちのひとつだ。このゆるーい感じがいたく気に入り、歳をとってからこんな感じで自転車と付き合っていくのもいいな、と思った記憶がある。今回は今シーズン初めてのランニングの大会が終わったこともあり、少しリラックスしたいと思ってまた借りてみた。

でもユルい本だと思って読んでみたら、甲州街道で自転車ごと前転し歯を2本折り顔面を擦りむいた話とか、道東をツーリングして標高700mの知床峠に登ったりとか、古希を迎えた老人(失礼)としては驚くべき活発さで走り回っているのだ。しかも文庫版あとがきによれば、喜寿を迎えた2012年も毎日40km自転車に乗っているらしい。スゲエ!!

ちなみに続編の「自転車ぎこぎこ」も傑作だ。伊藤さんと自分は30歳離れているようなので、あと30年はこんな生活ができるんだと思ったら改めて嬉しくなってきた。自転車とマラソンとキャンプ、一生の付き合いにしたいな。☆☆☆☆。

中学2年の男子生徒が部室棟の屋上から転落し死亡した。
事故? 自殺? それとも他殺なのか……?
やがて生徒がいじめを受けていたことが明らかになり、小さな町に波紋がひろがり始める。
朝日新聞朝刊連載時から大反響の問題作、ついに単行本化。



沈黙の町で沈黙の町で
(2013/02/07)
奥田英朗

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最近ある方のblogに刺激を受けて、マラソンのトレーニング計画表を作ってみました。1月26日の若潮マラソンに向けてうまく疲労を抜きつつピークを迎えるのが目的なんですが、これによれば1月はなんと200km走ることに(笑)



自分史上最高です♪
いや、走るのはこれからなんだが(笑)


さて、本作は朝日新聞朝刊に連載されていた問題作で、連載中に大津の事件が起こったことから連載中止も叫ばれたらしい。内容が内容なだけに私もどのように解釈しようか、読み終えた後もしばし逡巡した。読む人の立場によっても受け止め方は異なると思うのだが、ここは正面から、本作によってイジメ問題に対しどのような教訓を得るのか、という観点から感想を書いてみたい。

本作にはいじめられた本人の視点は登場しない。いじめた者、傍観した者、子供に疑いを掛けられた親、いじめの起きたクラスの担任・・・ 事件の経緯はこれらの関係者の視点から明らかにされていく。ここが本作の一つの特徴だ。

読んでいくといじめられた者にもいじめられた理由があるように思えてくる。しかしそれはいじめた者の視点からしかいじめられた者を見ていないからだ。多かれ少なかれいじめられる側には、いじめる側にしかわからない理由があるのだ。もちろんそれはいじめを正当化するものではないし、その理由が客観的ということでもない。

しかし主観ではありながらも、少しづつ事実が明らかになっていき、実は傍観者だと見えていた者も加害者であったことが分かってくる。これらの加害者に、自分が加害者であるという意識が果たしてあるのかどうか。最後まで被害者やイジメを疑われた仲間をかばおうとする者自身も、実は加害者である。結果として浮かび上がるのは、完全に潔白な人間が誰もいないという構図。親達も自分の子供しか見えていないが故に、いつの間にか他の子供をいじめる構図になっている。生徒を守ろうとする教師も被害者や加害者を傷つけている。

こんな中で加害者にならないためにはどうしたらいいのか。ここからは以前からの私個人の意見。きれいごとに聞こえるかもしれないが・・・

加害者にならないためには、傍観者でいてはいけないのだ。もちろんイジメの現場に乗り込んで、ヒーローよろしく「イジメはやめろよ!」と言う事ではない。イジメが行われている状況に対していろんな形で抵抗を示すこと。そして何より、その抵抗により自分が孤立することを恐れないこと。場合によっては自分がイジメの対象になることも厭わないこと。もちろんそれは勇気がいることなのだが、自分がいじめられた時だけ都合よく助けてくれる人はいない。そしてイジメは子供の専売特許ではない。大人の世界なんてイジメばかりだ。

自分も会社で、周囲から急に避けられ始めたと感じることがあった。こちらが窓際なので(笑)しょうがないのだが、サラリーマンなんて薄情なものだ。でも変わらず付き合ってくれる人のことも絶対忘れない。離れていった人のことも執念深く忘れないが(笑) 先が見えない状況では、声を掛けてもらえるのは本当に嬉しいものなのだ。

タイトルの「沈黙の町で」とは、沈黙しているからといって無関係を決め込めるわけではない、という著者のメッセージにも思える。ただ狂言回しだと思われる担任教師あるいは刑事が寡黙に過ぎて、そのメッセージが分かりにくいのが残念。☆☆☆☆。

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