量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

カテゴリ: ●読書記録(毎月のまとめ)

受験勉強で低迷していた読書量が久々に通常ペースに復帰。5千ページ越え。ちなみに去年1年間に読んだ本は187冊と久々に200冊割れ。しばらく休んでなおさら海外翻訳小説への傾倒が深まった。12月はやっぱりローレンスブロックの「殺し屋ケラー」。ちょっと人間性に問題あるような気がしないでもないが、状況に流されて受け身でしかも鮮やかに人を殺していくケラーの魅力に引き付けられる。こんな人生本当にあるんだろうか。


12月の読書メーター

読んだ本の数:13
読んだページ数:5072
ナイス数:114

殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)殺し屋 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)感想
殺し屋ケラー、ニューヨーク在住。息をするように人を殺す。そこに何の力みもないのでまるでビジネスマンのものがたりを読んでいるかのようだ。こんなに肩のこらないハードボイルドものは初めてかも。シリーズ読破するぜ。⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎。
読了日:12月07日 著者:ローレンス ブロック

一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)一人だけの軍隊 ランボー (ハヤカワ文庫)感想
昔読んだような気になっていたが読んでなかった。これは映画のサバイバル物感が薄れて純粋ハードボイルドになっている。壮絶。☆☆☆。
読了日:12月10日 著者:デイヴィッド・マレル

一発屋芸人列伝一発屋芸人列伝感想
ルイ53世文章が達者だがちょっと自分に振り回されている感も。どの文章も起承転結の「転」が早すぎる。振り向けばHGとテツ&トモしか残ってないじゃないか。☆☆☆。
読了日:12月10日 著者:山田ルイ53世

父の肖像〈上〉 (新潮文庫)父の肖像〈上〉 (新潮文庫)感想
堤清二による堤康二郎伝。というよりは父の姿を描きながら自分のアイデンティティを追いかけた本というべきか。自分のことをかたるとこんなにもどろどろするんだなあという典型みたいな本。堤義明への面当てが醜い。☆☆。
読了日:12月17日 著者:辻井 喬

父の肖像〈下〉 (新潮文庫)父の肖像〈下〉 (新潮文庫)感想
上巻の感想にも書いたが堤一族がいかに歪んでいるかはよくわかる本。父親への愛情に満ち溢れている。悪く書いているようで褒めまくっている。☆☆。
読了日:12月17日 著者:辻井 喬

殺しのリスト (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)殺しのリスト (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)感想
シリーズ第1作からすればずいぶんウェットな感じに仕上がっているが第1作でのドライな感じは持続。これは確かに第1作から読まないと面食らう。今回もケラーは淡々と仕事人ぶりを発揮。☆☆☆。
読了日:12月17日 著者:ローレンス ブロック

殺しのパレード  (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)殺しのパレード (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)感想
今回はなんだか心に残るエピソードが多かった。ケラーは触媒で会ってそれに絡む人間の内面をむき出しにする。お互いに殺し合う女たちの話は、欲深いものに下る天罰を連想させるし、バスケットボールの話は自分の子どもの頃を思い出して胸が痛かった。そして切手コレクターは本当に死んだのか。これが一番の謎だな。なぜかこの編だけは殺しに至るケラーの心の動きの描写が無い。親しくなったこととどう折り合いをつけたのか。いよいよ次は「最後の仕事」。久々の☆☆☆☆☆。
読了日:12月20日 著者:ローレンス・ブロック

挑戦するフォトグラファー挑戦するフォトグラファー感想
やっぱり自転車の世界は奥が深い。まさに文化。日本人がその世界に入って行った物語を読むと、その奥行きがよく分かる。一つの道を究めた人の話は面白い。☆☆☆。
読了日:12月20日 著者:砂田 弓弦

殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)殺し屋 最後の仕事 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)感想
巻末の伊坂幸太郎のあとがきがいい。「エンジンを載せるのか」。これまでのケラーシリーズの心地よい脱力感はグライダーのように風に任せて漂うゆえだったと気付いた。しかし結構罪のない人をあやめているのでこれで幸せになっていいのかという気がしないでもない。☆☆☆☆。
読了日:12月24日 著者:ローレンス・ブロック

古事記物語古事記物語感想
ふとしたことで読みたくなったのだが、仁徳天皇とか結構時代が下ったところまで書いているんだな。万葉集とかぶる? 同じような物語が多いので忍耐強く読まないとならない。☆☆☆。
読了日:12月26日 著者:鈴木 三重吉

兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)兄弟の血―熊と踊れII 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
「熊と踊れ」の続編だがこちらはフィクション。前作とは異なりレオがより知的になり暴力の匂いが薄くなった気がする。この方がルースルンドのオリジナルっぽい。下巻へ。⭐️⭐️⭐️。
読了日:12月31日 著者:アンデシュ ルースルンド,ステファン トゥンベリ

兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)兄弟の血―熊と踊れII 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
そっか。この本の副題は「熊と踊れ2」なのか。なるほどレオと父のキャラが被り過ぎ。そして結末はやや破綻気味。父や母が事実に触れるところまで書いた方が良かったんでは。⭐️⭐️⭐️。
読了日:12月31日 著者:アンデシュ ルースルンド,ステファン トゥンベリ

殺し屋ケラーの帰郷 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)殺し屋ケラーの帰郷 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)感想
コミカルミステリーとでも呼ぶのか。殺人を生業にする夫婦。馴染む妻も怖い。そこはかとない道徳観を持った殺し屋という設定はそんなに悪くはない。パーフェクトハンターのビクターは熱すぎるが。⭐️⭐️⭐️。
読了日:12月31日 著者:ローレンス・ブロック


読書メーター

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いやー、月間3冊なんてもしかしたら20代のとき以来じゃないか。テストが気になってとても読書なんてできる状況じゃなかったというのが本当のところ。それでも「もしも中学受験で」は妻に勧められて読んだ。そう、一人受験生を抱えている我が家としては極めて自分たちの問題なんだな、これが。本の内容としては題材が受験勉強だと言うだけで、スポ根ものと展開は同じ。親にとってはサッカーチームのレギュラーになれるかどうかと希望の中学校に行けるかどうかってそんなに変わんないよね。

これまでちょっと読書でも量を追い過ぎていたような気がする。一か月間ほとんど本を読まなかったらその辺は冷静に見られるようになったかも。仕事して走って本読んでればいいやと思ってたんだなあと改めて実感。ちょっと他のこともするか。



11月の読書メーター

読んだ本の数:3
読んだページ数:750
ナイス数:61

もし中学受験で心が折れそうになったらもし中学受験で心が折れそうになったら感想
受験生を持つ親として妻の勧めで読了。ちょっときれいごとな感じもする。当の息子にも読ませたが「ふーん」という反応だった。まあ他にやりたいことが一杯あるからねえ。スポ根物と思って読めば面白い。☆☆☆。
読了日:11月27日 著者:おおたとしまさ

日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争感想
結局日本の自動車産業は凄いという結論に行く前提にしか読めない。それに他の移動機械産業との多面的比較も必要じゃないでしょうか。☆☆。
読了日:11月27日 著者:泉谷 渉

太平洋 その深層で起こっていること (ブルーバックス)太平洋 その深層で起こっていること (ブルーバックス)感想
太平洋の海水から海底、海溝まで太平洋のすべてが書いてある。ハワイとかはどうやってできたのか謎だったが、ホットスポットっていうのがあるんですね~。それに海洋汚染がチャレンジャー海淵にまで及んでいるのを知り、ゾッとした次第。☆☆☆☆。
読了日:11月30日 著者:蒲生 俊敬

読書メーター

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10月は色んな事が目標未達だった。ああ、読書については11月末まではどっちにしてもそんなに読めないのだが。それにしても読書メーターに登録してもうすぐ5年になるが、1か月で6冊2000ページって多分最低記録。59か月目にして!(笑)

今月はやっぱり再読した「HHhH(プラハ、1942年)」。最初に読んだのは4年前でその時はただただハイドリッヒの凶悪さに驚いたのだが、今回読んでみて小説としての斬新さ、作者の挑戦に感銘。これをやられたらノンフィクションは立つ瀬がないだろう。

あとは以前ブログにコメントをもらった山本先生の「日英開戦への道」。英国というフィルターを通すことで太平洋戦争の構図がクリアに浮かび上がる。読む冊数が減った分、一冊一冊を丁寧に読むようになったかも。本来読書はこういった密度のほうが望ましい。



10月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:2032
ナイス数:77

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)感想
4年ぶりに再読。前回はハイドリッヒの凶悪さにただ驚くばかりだったが、今回読んでみて、過去に事件に主人公が自分を投射していく過程に新鮮に驚いた。小説家は小説を書くときにこんなふうに客体にアプローチして自分の中に取り込んでいくのか。その過程自体が物語でありおそらく作品ごとに物語は全く異なる。そして実際に描かれる作品はその物語の一部を切り取っているに過ぎないのだ。この作品が絶賛される理由が分かった気がした。☆☆☆☆☆。
読了日:10月08日 著者:ローラン・ビネ
七人のイヴ III (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)七人のイヴ III (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)感想
種明かしをされると壮大な物語に見えるが、地底人、海底人各々の物語をちゃんと書いて欲しい。5千年もたってるんだからいろんな物語があったはずだし、何より生存するための技術的背景があったはず。それに海底の許容量は宇宙より大きいはずで何故それが表に出なかったのか。微妙だ。第3巻はそのサプライズのためだけにある。☆☆☆。
読了日:10月15日 著者:ニール・スティーヴンスン
ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれないブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない感想
ほとんど期待しないで読み始めたのだが人間模様が面白すぎる。フィクションではなかなかここまで書けないだろう。その後の話が2chに掲載されたりしないんだろうか。☆☆☆。
読了日:10月15日 著者:黒井勇人
魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)感想
この人の話は徹頭徹尾、悪魔との対話だ。悪魔、すなわち人間に内在する邪悪なもの。最後の屋根裏のりんごなんてまさに不道徳な行いそのものじゃないか。食べた後に賢者の時間が訪れるところまでそっくり。やっぱりなんだかハンガリーとかそっちのほうのにおいがするなあ。秋の夜長にゆっくり読みたい本である。☆☆☆☆。
読了日:10月15日 著者:ディーノ ブッツァーティ
株主を大事にすると経営は良くなるは本当か?株主を大事にすると経営は良くなるは本当か?感想
さすがは企業不祥事対応第一線の弁護士だけあって内容は充実しているのだが、これは誰が読むのだろう。頭の固い人には面白みのある実例が不足しているし、前向きに学ぼうとしている人にとっては具体性をやや欠いている。微妙なところ。☆☆☆。
読了日:10月20日 著者:中島 茂
日英開戦への道 - イギリスのシンガポール戦略と日本の南進策の真実 (中公叢書)日英開戦への道 - イギリスのシンガポール戦略と日本の南進策の真実 (中公叢書)感想
ワシントン条約におけるハワイとシンガポールの海軍基地の位置付けとか、開戦前の陸海軍に対するガバナンスのなさとか、なるほどにあふれた本。でも著者も海軍で一番悪いのは開戦をあおった山本五十六だと思ってるんじゃないだろうか。南進するだけならあれほどひどいことにはならなかったのかもしれない。☆☆☆☆。
読了日:10月29日 著者:山本 文史

読書メーター

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今月は雨が多く走る時間の代わりに読書できたはずだったがページ数、冊数ともに激減。まあ勉強しているから当たり前か。逆によくこれだけ読んだ。

今月は長い間放っておいたブッツァーティの作品を新たに読んだことが収穫か。しかしこの人は寡作なのであんまり浸れないのがもったいない。タタール人の砂漠くらいのインパクトのある作品があと2つくらいあればなあ。

あとは「大英帝国の歴史」。単に経済的に帝国であっただけでなく、また支配される側にとっても精神的、文化的な意味でも単に植民地であるのとは違うのだな。


9月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3693
ナイス数:97

伴走者伴走者感想
スキーにも伴走があるとは知らなかったが、いずれも競技者の心理を切り口鋭く掬い取った好著。伴走というとランナーとそれをリードする伴走者の二人で競技すると思いがちだが、これを読むともともと1人のアスリートの心理を二つに分解したものだということが分かる。健常者の競技者1人の時には表に出てこない感情が見えた。☆☆☆☆。
読了日:09月02日 著者:浅生 鴨

七人のイヴ Ⅰ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)七人のイヴ Ⅰ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)感想
破壊された月の質量と地球に対する位置エネルギで計算すると、隕石落下時の発熱で気温が上がるくらいになるのかどうかが気になったが、たぶん計算してるんだろうな。そういう読み方しちゃいけないんだろうな(笑)原書が一冊のところを3分冊にして訳しているらしいので、コメントはこんなところで。☆☆☆。
読了日:09月07日 著者:ニール・スティーヴンスン

フィレンツェ――比類なき文化都市の歴史 (岩波新書)フィレンツェ――比類なき文化都市の歴史 (岩波新書)感想
6月にフィレンツェに行ったので復習の意味で読んだ。行く前に読めばよかったとも思うが、実際に行って見た建物が出てくると俄然関心がわく。するともう一回行かなければならなくなる(笑)。12世紀あたりから18世紀に掛けて街が少しずつ整っていった様子がよく分かる。次回はフィレンツェに長居しよう。その際には必携。☆☆☆☆。
読了日:09月11日 著者:池上 俊一

燃える部屋(上) (講談社文庫)燃える部屋(上) (講談社文庫)感想
マイクルコナリー既刊本完読! 感想は下巻で。☆☆☆☆。
読了日:09月16日 著者:マイクル・コナリー

燃える部屋(下) (講談社文庫)燃える部屋(下) (講談社文庫)感想
二つの事件は無関係だったんだな。誤解していた。そして期待できる新人。それにしても不法侵入で停職ってカッコ悪すぎる。本人もこれほどきまりの悪い終わり方無いだろうな。あ、しかし原作はもう4作先まで出てるのか。頑張って読んでみるか。☆☆☆☆。
読了日:09月16日 著者:マイクル・コナリー

徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男感想
Jリーグの事務局と岐阜県庁が一方的に悪者に書かれているのだが、要するに今西氏とJリーグの間に何らかのトラブルがあったということではないのだろうか。パワハラと書かれているのだが、その構図が今一つはっきりしない。もしかすると誤解されやすい人なのかも、と思ってしまった。正直、著者が感情的になり過ぎていて、この本だけでは分からない。☆☆☆。
読了日:09月16日 著者:木村 元彦

地検のS地検のS感想
Sこと地検の総務課長が暗躍するお話。なぜ暗躍するのかについてはもちろんちゃんとオチがある。それにしてもこの人の謎解きも突飛だなあ。現実にそんなに思い通りに人は動かないって。「教場」の悪影響。☆☆。
読了日:09月20日 著者:伊兼 源太郎

現場者 300の顔をもつ男 (文春文庫)現場者 300の顔をもつ男 (文春文庫)感想
大杉漣自伝。末っ子で寂しがり。いつも誰かに求められたくて、役を選ばずに映画に出まくったんだなあ。映画作る方も彼がいれば絶対なにがしかやってもらえるから便利な役者だ。でも何をやっても大杉漣にしか見えなかった。それでいいじゃないか。☆☆☆。
読了日:09月22日 著者:大杉漣

七人のイヴ Ⅱ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)七人のイヴ Ⅱ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)感想
七人のイブはそういう意味でもあったのか。最初に登場してから出番がないと思っていたけど。彼ら以外に人類がいないということになるとこんなことも起きるんだな。これは映画化は無理そうだから漫画で読みたいかも。☆☆☆☆。
読了日:09月25日 著者:ニール・スティーヴンスン

大英帝国の歴史 上  -  膨張への軌跡 (単行本)大英帝国の歴史 上 - 膨張への軌跡 (単行本)感想
改めて大英帝国の歴史を振り返るとオランダとの関係や世界の植民地への態度など実に興味深い。奴隷売買を始めておいて自ら取り締まるとかその道徳の根源は何?と思わなくも無いが、下巻が楽しみ。☆☆☆☆。
読了日:09月26日 著者:ニーアル・ファーガソン

古森の秘密 (はじめて出逢う世界のおはなし)古森の秘密 (はじめて出逢う世界のおはなし)感想
冷酷な元大佐と森の生き物たちと少年の物語。大佐が人間性を取り戻すお話と言ってしまってよいのか。森には森で邪悪な面もある。全体に漂う幻想的な空気に加えてその辺の出し入れも見どころ。イタリアというよりはオーストリアとかチェコのお話と言われたほうがしっくりくる。☆☆☆☆。
読了日:09月27日 著者:ディーノ ブッツァーティ

大英帝国の歴史 下  -  絶頂から凋落へ (単行本)大英帝国の歴史 下 - 絶頂から凋落へ (単行本)感想
帝国主義への信仰が失われた時、神への信仰も失われた、という下りが強烈。それがフィルビーを生んだのか。第一次大戦は英国のドイツに対する対抗意識が生んだとしか思えない。そしてシンガポール。日本軍に奴隷扱いされるという大転換。今までの見方を覆してくれた良本。☆☆☆☆。
読了日:09月30日 著者:ニーアル・ファーガソン

読書メーター

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昨今、自分のお気に入りの本を紹介するというのが結構流行なのだが、どうも自分とは観点が違う。それは良いとか悪いとかではなく、読書の目的がそもそも違う気がする。

自分が読書をする目的は一つで、それは世の中で何が起きているのかを知りたいという一点に尽きる。文章の表現の鋭さやリアリティや繊細さを味わったりとか、そこに書かれていることにいかに感動したかとかとかではない。

自分は同じ出来事について複数の作家が書いた本を読むようにしている。同じ出来事でも、裏から見た時と表から見た時は見え方が違う。両方を読んでいると何が自分の都合で書かれていて何が動かない事実なのかが見えてくる。両者の思惑も当然見える。

ノンフィクションの読み方はそういう感じ。かといってフィクションだって読みます。でもそれは修辞上のテクニックの巧拙を味わうわけではなく、その作品の世界観(ほかに言葉が無いw)を受け入れられるかどうか。もちろん修辞上のテクニックもその世界観を形作るのに大いに貢献しているが、それだけじゃない。

かといって出口のない話が苦手なわけでもない。自分の中のフィクション第2位のプッツァーティ「タタール人の砂漠」なんて出口はどこにもないし救いも全くない。でもこの作品を書くことでしか伝えられなかった作者の伝えたいことは分かる。

あと、作家に対してはかなり疑り深い。なんども若手の作家にがっかりさせられてきたからだと思うのだが、1作だけで信用することはまずない。特に若手なら2作、3作と読んでみなければ、本当にその作家の作品に身を投げてよいかどうか確信が持てない。もちろん1作目で以降読むのをやめる作家もたくさんいる。(1作とは必ずしも1作目を意味していません)

まあ1作くらいならそれまでの人生を全部ぶっこんで凄いのが書けたりするからね。それはそれで凄いと思うけど、自分が欲するのは安定して読んでいける作家。信用できる作家。最近の国内の作家では本当にいない。編集者も至らないんだと思う。

本屋大賞とかできるくらいだから、読み手もレベルが下がったんだろうか。あれも読むに耐えないものが結構ある。こうなってくると、失望するのが怖くて新しい人は読めない。いくら場面をきれいに切り取れても、物語を構成する力が無い人はダメだ。写真家が映画監督になれないようなものだ。もちろん写真家的センスは必須だけど。






8月の収穫はなんといっても池内恵。中東のことを語らせたら今の日本でこの人以上の人はいないだろう。なんと言ってもベースの知識が凄い。イスラム教の歴史と現在の中東の地政学がぴったり一致している。

そこにさらに現在の情勢に対する情報量の多さ。シリア、ヨルダン、イラク、イラン、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタール、ドバイ、アラブ首長国連邦、エジプト。さらにクルド人とイスラム国。

何作も著作を重ねてきて、文章も随分とこなれてきた。「イスラム国」「サイクスピコ」と来て「シーア派とスンニ派」で随分わかりやすくなった。中東に関してはこれだけ我々の生活にも直接影響があるにもかかわらず意外なほど情報が少ない。こういう事実を伝えようという意欲に満ちた研究者の存在はありがたい限り。



8月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:4753
ナイス数:181

野球バカは死なず (文春新書)野球バカは死なず (文春新書)感想
おお、なんか割りとまともな本ではないか。「ベンチがアホ」の経緯とかサッチーとのエピソードとか選挙の話とか、彼なりの哲学は感じられるぞ。ただ大谷に関して「それでは大記録は作れない」のはそうかもしれないが、もはやみんなそこに価値を置いてないんだよな。☆☆☆。
読了日:08月01日 著者:江本 孟紀

オシム 終わりなき闘い (小学館文庫)オシム 終わりなき闘い (小学館文庫)感想
オシムが力を注いで国際社会に復帰させたボスニアサッカーがブラジルワールドカップに出場する経緯。前作「オシムの言葉」よりは周囲の空気が緊張を解いたことが伺える。それにしてもハリルホジッチってセルビア人だったんだ。これを読むまで全く気付かなかった。だから日本サッカーと相性が合うと思われたのかも。☆☆☆。
読了日:08月02日 著者:木村 元彦

映画『アンダーグラウンド』を観ましたか?―ユーゴスラヴィアの崩壊を考える映画『アンダーグラウンド』を観ましたか?―ユーゴスラヴィアの崩壊を考える感想
映画批評というよりは映画を酒の肴にして学者が薀蓄を傾ける本。ユーゴ各国の経済力の差など資料として使えるものも多い。ただ語り口は理論的に過ぎ民衆に寄り添う感じがまったくないのでかなり鼻に付く。☆☆。
読了日:08月03日 著者:越村 勲,山崎 信一

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)感想
シリアとヨルダンの国境って直線で不自然だと思っていたが、あれがサイクスピコ協定の名残なのか。強引に線を引いたこの協定に、地元の事情を反映させたセーブル条約、さらに大国の都合を反映させたローザンヌ条約の3つ1セットで分かりやすく解説してくれる。確かにこの事情の理解なくしてアラビアのロレンスの理解無しだ。オスマントルコ、露土戦争から現代のトルコ・ロシア問題まで、霧が晴れるような書物。もう一回読もう。☆☆☆☆☆。
読了日:08月06日 著者:池内 恵

不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈上〉1989~1996 (新潮文庫)不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈上〉1989~1996 (新潮文庫)感想
実は再読。初回は面白おかしく読んだが、2度目になると現地の歴史や民族への理解の浅さが鼻に付く。時間つぶしの本。といいつつ下巻へ。☆。
読了日:08月06日 著者:宮嶋 茂樹

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)感想
NHK特集番組の書籍化。出版当初はかなり話題を呼んだが今読むと、PR会社が存在したことが当時の情勢にどう影響を与えたかの視点が欠けている。強いて言えば書かれているのはユーゴを国連から追放したことくらい。経済制裁はそれ以前から始まっていた。そもそもユーゴは独立を阻止する側なのではなから悪玉になりやすい。ユーゴ側がPR会社を使っていたとしても逆転のチャンスはほとんどなかっただろうな。☆☆。
読了日:08月13日 著者:高木 徹

不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈下〉1996~1999 (新潮文庫)不肖・宮嶋ちょっと戦争ボケ〈下〉1996~1999 (新潮文庫)感想
やっぱりこの人は自衛隊が好きなんだなあ。自衛隊広報担当だと思って読むと違和感が無い。☆☆。
読了日:08月17日 著者:宮嶋 茂樹

ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書)ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書)感想
一言で感想を書けるほど簡単ではないが、第一次大戦の勃発の引き金を引いた時の大国間の力関係の理解に役立つ。なるほど、セルビア。って感じ。それにクロアチア。メンタリティはイタリアにかなり近い気がする。☆☆☆。
読了日:08月17日 著者:柴 宜弘

モラルの話モラルの話感想
自分を解放していくことが自分を束縛することにつながる、この出口のない感じ。実存とか賢く考えているようで実はすごく不自由。正直、無駄な知恵の使い方だと思う。だれからも手の届かない山奥にこもればいいのに。☆。
読了日:08月17日 著者:J.M. クッツェー

アイルランド革命 1913-23――第一次世界大戦と二つの国家の誕生アイルランド革命 1913-23――第一次世界大戦と二つの国家の誕生感想
アイルランドというかエール共和国成立の経緯、初めて読んだ。カトリックとプロテスタントの諍いって現代にまで引きずるものなんだろうか。これほど文明が発展した現代でも。そう考えると日本の無宗教というのは文明化が高度に進んだ結果なのか?少なくとも内戦にはならなさそう。☆☆☆。
読了日:08月17日 著者:小関 隆

オリバー・ストーン オン プーチンオリバー・ストーン オン プーチン感想
オリバーストーンがプーチンにすり寄り過ぎていると悪評ふんぷんだったドキュメンタリー番組の文書化。実際の会話がどういうテンポでなされたのかは分からないが、やはりプーチンの話し方からは知性が漂う。もちろん信用できるかどうかとは別。☆☆☆。
読了日:08月17日 著者:オリバー ストーン

【ミリタリー選書30】フランス外人部隊のすべて (部隊こそわが祖国 創設から現代までの軌跡)【ミリタリー選書30】フランス外人部隊のすべて (部隊こそわが祖国 創設から現代までの軌跡)感想
フランス外人部隊の歴史と成り立ちがよくわかる本。そうか、ナポレオン三世のときの名残なのか。そしてジュネーブ条約の対象にはなるので傭兵とは異なる。なるほど。それにしても大半の大隊がディエンビエンフーで全滅しているというのもすさまじい。結局フランス軍ってそんなに強くないんだよな。☆☆☆。
読了日:08月18日 著者:古是 三春,ビトウ マモル

100年後の世界―SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来 (DOJIN選書)100年後の世界―SF映画から考えるテクノロジーと社会の未来 (DOJIN選書)感想
人工知能やサイボーグなどかつてはSFでしかなかった技術が一般化してきたときに100年後の世界はどうなっているかという本。ただ例えばサイボーグについても「ドーピングですら線引きが難しくサイボーグも道徳的にダメといえるかどうか分からない」と結論から逃げているので、技術カタログみたいな本になってしまったのが残念。☆☆☆。
読了日:08月23日 著者:鈴木 貴之

イスラーム国の衝撃 (文春新書)イスラーム国の衝撃 (文春新書)感想
本が書かれたのが2015年で、その後ISも壊滅させられシリア情勢も変化があったので読むのが2年遅かった(笑) 著者は日本では中東情勢の第一人者だと思うが、もうちょっと考え方を記号化する工夫をしてもらえると読みやすくなるのだが。☆☆☆☆。
読了日:08月23日 著者:池内 恵

アメリカの原爆神話と情報操作 「広島」を歪めたNYタイムズ記者とハーヴァード学長 (朝日選書)アメリカの原爆神話と情報操作 「広島」を歪めたNYタイムズ記者とハーヴァード学長 (朝日選書)感想
わざわざハーヴァードの学長を黒幕として引っ張り出しているが根拠は25年前のアメリカの1本の論文のみ。自分で検証を行なったわけでも無いようで、それを事実のように断定する書き方はどうなのか。また放射能被害が無いとの欺瞞があったと散々書いているが、そもそも放射能被害の定義がかかれていない。残留放射能なのか爆発時のガンマ線等によるものなのかも判然としないまま批判が続く。正直?と感じる本。最後の20ページだけ読めばいいのでは。☆。
読了日:08月23日 著者:井上 泰浩

【中東大混迷を解く】 シーア派とスンニ派 (新潮選書)【中東大混迷を解く】 シーア派とスンニ派 (新潮選書)感想
凄いな~、凄い。中東事情をずっと追ってきた筆者乾坤一擲の一冊。日本人でここまで突っ込んで分析できる人がいることに感謝。だいたい今どき一冊読んだだけで新聞記事の見え方が変わる本なんてあるだろうか。中東に、イスラムに関心が無い人にこそ読んでほしい。多分今年ナンバーワンの一冊。☆☆☆☆☆。
読了日:08月27日 著者:池内 恵

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦感想
ギケイキの解説最高!これはハードボイルド室町時代も読まなければ。☆☆☆。
読了日:08月31日 著者:高野 秀行,清水 克行

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