量は質を凌駕する

 ~ アウトドアと読書の日記

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君には、警察学校を辞めてもらう。この教官に睨まれたら、終わりだ。全部見抜かれる。誰も逃げられない。前代未聞の警察小説!

教場教場
(2013/06/19)
長岡 弘樹

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「爽快な後味の悪さ」と評されるとおり、白髪・隻眼の鬼教官風間は、その磨き上げられた観察眼と教室内の内通者を操って、警察学校生徒たちの警察官としての適正を見抜き、ふるい落としていく。時にはあえて悪事を行うように仕向けてまで、警察官という職業に奉職する覚悟があるのかどうかを見極めていく。

恐ろしかったのは友人を裏切った生徒が中耳炎であることを風間はその友人に漏らし、その耳に蟻を侵入させて鼓膜を食い破らせる、という仕掛けを行うよう誘導したこと。仲間意識を問うているわけではない。裏切った友人に制裁を与えるためにどのような方法を取るのかを試されたのだ。その計略に乗った友人は警察学校を去った。

どのような状況に追い込まれようとも目的を見失わない心の強さを持った人間を探している。そんな風に見えた。これは警察小説だ。刑事小説ではなくて。その意味で非常に貴重だし、警察学校という場に縛られない続編を期待したい。それから巻末についている参考文献「地域警察官のための現行犯人逮捕手続書・緊急逮捕手続書作成の手引き」とか「クローズアップ実務Ⅰ・職務質問」にも興味深々何だが(笑)☆☆☆☆。

ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第二次大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第二、第三の殺人が発生。被害者の過去を探り、犯罪に及んだのは何者なのか。ドイツで累計200万部突破の警察小説シリーズ開幕。

深い疵 (創元推理文庫)深い疵 (創元推理文庫)
(2012/06/21)
ネレ・ノイハウス

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先日読んだ「白雪姫には死んでもらう」はシリーズ第4弾で、こちらが第3弾。順番は逆だったが支障はなかった。むしろ、テレビドラマでよくあるスピンアウト物みたいな感じで面白かった。

貴族出身のオリバーとアウトドア・動物大好きピアのコンビが、今回はナチスドイツ時代にさかのぼる謎に迫る。「白雪姫…」もそうだったが、とにかく登場人物が多く、しかも苗字で呼んだり名前で呼んだりするので、ただでさえ複雑なストーリーがますます複雑に。

そしてその混乱のなかで、誰もが「こいつが本命」という容疑者が浮かび上がるのだが、最後に3回くらいどんでん返しを食らわせられる。しかもオリバーとピアはすぐにめげる、容疑者に惚れる、その影響で犯人を取り逃がす…
几帳面なドイツ人は本当にこの小説が好きなのか?と思うようなキャラクターだ(笑)

でもドイツではハリー・ポッターより売れたらしいんだよね…
といっても自分はハリー・ポッター読んでないので比べようもないが。大陸風の重厚さと独特のリズムはとてもよい。☆☆☆。

空軍基地跡地の燃料貯蔵槽から人骨が発見された。検死の結果、11年前の連続少女殺害事件の被害者だと判明。折しも、犯人として逮捕された男が刑期を終え、故郷に戻っていた。彼は冤罪だと主張していたが村人たちに受け入れられず、暴力をふるわれ、母親まで歩道橋から突き落とされてしまう。捜査にあたる刑事オリヴァーとピア。人間のおぞましさと魅力を描いた衝撃の警察小説!

白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)白雪姫には死んでもらう (創元推理文庫)
(2013/05/30)
ネレ・ノイハウス

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まあ、まずドイツのミステリーだ。あんまりお目にかからない。有名なところではシーラッハがいるが、あちらはかなり高尚な精神世界へと踏み込んでいる。こちらはかなりポップだ。その混乱振りも含め「刑事フロスト」のドイツ版とでも言うべきか。もちろんドイツなのでフロストのような下品な刑事は登場せず、あんなご都合主義な解決もしないし最後にまとめて謎解きとかもしない。あくまでもすべての謎にはちゃんと答えがある(笑

ストーリーは、ある殺人事件の罪を村ぐるみで一人の男に背負わせようとして、誰が見方で誰が敵なのかわからなくなるという筋。これに対して、フロストとは正反対の貴族出身刑事オリバー(笑)とアウトドアガール・ピアの二人が真実に迫っていく。シリーズ第4作目らしいが邦訳は2作目。前作を読んでいなくても楽しめるが、読んでいると前作が読みたくなる。

このオリバーは、貴族出身らしく抑制的でつねに紳士的にふるまうのだが、本作では妻の不倫疑惑もあり常にくよくよしている。本来はその風貌とさわやかな語り口でいろんな捜査もかるーくこなしていそうなのだが、本作ではその片鱗はほとんどうかがえないのが残念だ。そういえば昔テレビドラマで「刑事貴族」ってのがあった(笑
でもこっちは本当の貴族だ。しかも欧州大陸の貴族らしく、家は貧乏だ。というか質素だ。これがまたオリバーのだめさ加減に拍車をかけている。大陸のシニカルな笑いに接することができるという意味でも、本作は貴重だ。
☆☆☆。

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「しなくていい努力」までするな!
仕事は「ラク」をしないと成果は出ない!

◎どんどん“妥協”せよ、あっさり“朝令暮改”せよ
◎人に「好かれる」努力をするな
◎仕事は“つじつま”が合えばそれでいい
◎「反省」はしても、「後悔」はしない
◎職場では「勝ち目のないケンカ」をしない
◎スケジュールを“埋める”ことに満足する二流
◎セミナーに通うくらいなら、とことん本に投資する
◎無理して“社交的”にならなくていい
◎バカは本当にうつる――付き合う人間は厳選せよ
……

日本マイクロソフト元社長が説く「人生を消耗しない生き方」

“努力家”のあなたに読んでほしい本。

このムダな努力をやめなさい: 「偽善者」になるな、「偽悪者」になれこのムダな努力をやめなさい: 「偽善者」になるな、「偽悪者」になれ
(2012/10/09)
成毛 眞

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もう連日大変な暑さですね。自分は毎朝自宅を7時ちょっと前に出るのだが、その時間帯でもそれなりに暑い。試しに今日は先週買ったモンベルの帽子をかぶって出勤してみた。まあ日差しはそれほどでもないのだが、いわゆるビジネスカジュアルでもこの帽子はマッチするようだ。Facebookに写真をupしたらAmazonで買ってくれた人がいた。

今朝の新聞に「山口組が機関紙を発行!」という記事が載っていた。突っ込みようもないほど突っ込みどころ満載でそのまま引用するだけで十分なのだが「司組長の文章」「3代目生誕100周年」「最高幹部の釣り日記」。
この「組長の文章」というのは組長から構成員へのメッセージになっていて「代紋を使ってシノギができる時代ではない」「過去の成功体験を捨てよ」となっている。

いやー、すごい!!「代紋を使ってシノギができる時代ではない」!! 代紋を使わないということは、単なる個人的暴力ということ? あるいは普通の企業になるということでしょうか。でも集団を背景にした暴力使わなかったらただの企業ですからね。
「成功体験」という言葉も凄い。「釣り日記」に至ってはこの記事自体が「釣り」ではないかと思ってしまう。まあ言っていることはその辺のオーナー企業のオーナーとまったく変わらない。普段からビジネス書とか読んでたりして。「人を動かす」とかw

さて、HONZの主宰者である筆者は、自分にとってはけっこう重要なポジションを占める人である。何よりも本をたくさん読んでいて、どんな本が面白いかちゃんと公開してくれる。挙句にはHONZなどというサークルを立ち上げ、圧倒的な量でその質を凌駕している。HONZの本はハズレもあるのだが、量が多いので問題はない。自分がたくさん読めばいいだけである。と言いながら、最近少し量が落ちてはいるのだが…

本書の一番の趣旨は、仕事は仕事と割り切り、仕事を人生や人間性と同一視するなということだ。印象に残ったのは、「仕事は上から目線でみれば腹が立たない」という言葉。分かってはいるが難しいんですけどね。その他「使う場面が無ければ英語は学ぶな」「こだわらないのが最大のこだわり」などなど。日頃サラリーマンとして圧政に苦しんでいる庶民にとっては福音である。でも騙されてはいけない。天邪鬼だけでは生きていけない。本人も認めている通り著者は運がいいのだ。さらには運だけでなく、当たり前だが相当努力もしている。

「英語はいらない」といいながら本人は英語がかなり達者なようだ。以前どこかで読んだのだが、英語を勉強している時期は毎日英単語を10覚えていたらしい。これはかなりハードル高いですよ。毎日10語なんて受験生でもやりません。
この本で書かれていることは、自分の旨の中にしっかりととどめておいて、表にはこんなこと考えてるなんて決して出さないのが、「上から目線」の流儀かとw

個人的にもっとも力付けられたのは、「友達は多ければ良いというものではない」という言葉。全くの同感。Facebookの友達の数が本当の友達の数と区別がついていない人も痛い。友達は数えるものではない。友達でいるために、無理して色々付き合うというのも不毛。そういう人は友達ではなく「知り合い」ということにしておけば良い。本来友とは「遠方より来たる」ものです。

☆☆☆☆。

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裁判はこんなに面白いのか!時代を変えた12の法廷ドラマを、夏樹静子が迫真のノンフィクションノベルに。帝銀事件、永山則夫事件など有名事件から、翼賛選挙に無効判決を下した裁判長の苦悩、犯罪被害者になった弁護士の闘いまで、資料を駆使した人間ドラマとして描く。判決の裏にあった人々の苦闘と勇気に胸が熱くなる傑作。

裁判百年史ものがたり (文春文庫)裁判百年史ものがたり (文春文庫)
(2012/09/04)
夏樹 静子

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明治の初めからの大津事件や大逆事件、帝銀事件、永山事件など、司法のあり方が問われた代表的な事件を紹介している。

二次資料がベースとなっているようで、筆者ならではの味付けは薄い。これをインデックスがわりに、個々の事件の本を読みにいくという使い方か。☆☆☆。

いつも読んでいただいてありがとうございます。
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