2007年春までに北半球から四分の一のハチが消えた。巣箱という巣箱を開けても働きバチはいない。残されたのは女王バチとそして大量のハチミツ。その謎の集団死は、やがて果実の受粉を移動養蜂にたよる農業に大打撃をあたえていく。携帯電話の電磁波?謎のウイルス?農薬?科学者たちの必死の原因追及のはてにみえてきたのは。

ハチはなぜ大量死したのかハチはなぜ大量死したのか
(2009/01/27)
ローワン・ジェイコブセン

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2006年にアメリカでミツバチが突然大量にいなくなるという事態が発生。ミツバチは巣箱に入れられ、全米でミツバチによる受粉を必要とする農家に貸出されており、ミツバチがいなくなることで収穫に大きな影響が出てしまう。

これに養蜂業者や大学の生物学者が立ち上がり、果てはDNA分析まで行って原因究明が行われるが、電磁波、ある種のダニ、農薬に耐性のあるウィルス、病原菌などいろんな原因が取りざたされるものの、これという原因に行き当たらない。

そんな中、一人の養蜂家が敢えて天敵のある種のダニを蜂に寄生させ、弱い蜂を死滅させ強い蜂のみを残すという手荒なやり方で強い蜂のコロニーを作ることに成功しする。そもそも蜂は一匹ごとの固体の強さもさることながら、女王蜂、ハタラキ蜂、幼蜂育成係、種付け係など、コロニーとして機能しコロニーとして知性を持っていることが知られている。

蜂の生活する自然環境が農薬や公害で侵され、商業的収穫のために受粉係として全国を連れまわされるうちに、コロニーとしての抵抗力が失われたのではないか、というのがこの養蜂家の仮説だった。
このことはすなわち、我々が日々口にしている農作物がいかに不自然な形で育っているかということも表している。

蜂が人工的なストレスでいなくなった後には、植物自体も大きく影響を受けるに違いない、というのが著者の主張である。実はこの本、邦題は「ハチはなぜ大量死したのか」ですが、原題は「実りなき秋(Fruitless fall)」なのだ。前半はまるで推理小説のように引き込まれていきますが、後半では自然環境のバランスの危うさを教えられて暗澹たる気持ちになる。詳しく書き込まれている蜂の生態も相当に興味深い。

種の自主性に復活を委ねる考え方はどこかで見たと思ったら、途上国の支援だった。マイクロファイナンスが大躍進した理由もこの辺りにある。☆☆☆☆☆。

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