孫正義氏と並ぶ「ベンチャー三銃士」のひとりとして実業界に大きな存在感を持つ、HIS創業者(現会長)・澤田秀雄氏。学生時代に海外でビジネスをスタート、、帰国後に始めたHISを日本一の旅行会社に育て上げた。そのほか、周囲の反対を押し切ってスタートさせた証券会社や航空会社すべてを軌道に乗せ、60才を過ぎた今も次の挑戦を探している、生来の「ビジネス冒険家」だ。
その彼が「最大レベルの難関」として取り組んだ、長崎・ハウステンボスの再建。しかし、開園以来18年間ずっと赤字が続き、誰もが立て直すことができなかったこの巨大な施設をたった一年で黒字転換(2011年)し、その見事な手腕は各界で話題になった。
そんな中にももちろんピンチは幾度も訪れ、その度に胸に刻んだことがある。「運は誰にでもある、それをどうコントロールするかだけの問題」「ダメだ、と思った瞬間からダメになる」「事業も人生をかけた冒険。チャレンジしなければ意味がない」ーー豊富なエピソードと共に、これからの日本を担うすべての人に贈る、「失敗を恐れず自分の力で人生の舵取りをしていく」ための提言。


運をつかむ技術: 18年間赤字のハウステンボスを1年で黒字化した秘密運をつかむ技術: 18年間赤字のハウステンボスを1年で黒字化した秘密
(2012/09/25)
澤田 秀雄

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「18年間赤字だったハウステンボスを1年で黒字に」という副題に惹かれて読んでみた。最初は「社員の負けぐせを絶ちきる」「目標はディズニーランド」「敢えての値上げ」といった、ノウハウっぽい内容があるのだが、途中から「異端を大事に」「気が大事」といった著者の経営哲学の講義に変わる。冒頭も著者の起業した思い出だったりするので、ハウステンボスについてかたっているのは全体の2割くらい。

その2割も、金融支援により無借金化したこと、中身は分からないがコスト削減したこと以外には余り具体的な内容はない。最悪なのは「時には人間、旅に出ることが必要」「ライブドア事件のときは、それ以前から3ヶ月海外旅行に行く予定が決まっていた」「迷ったが結果的には戻ってきたときには事態が沈静化していた」。
これが上場企業経営者の危機管理なんだろうか。

おなじ視点で。今月の日経新聞の「私の履歴書」はテンプスタッフ創業者の篠原欣子氏である。この会社はかつて登録している派遣社員の名簿が流出し、しかも派遣社員を容姿でランク付けしたことも明るみに出てしまったことで有名である。ここ数日の掲載内容では、90年代には後継者である水田氏に経営を任せていたかのような表現もあり(実際は水田氏が社長になったのは今年で、氏はまだ53歳。つまり当時は30代)、「これはトラブルの責任逃れの伏線だな」と思っていたら、今朝の内容がまさにそれだった。

また問題になった、派遣社員の容姿にランク付けしているといわれた点については「何万人もの派遣社員にそんなランク付けられない」としながら「あれは接客等のスキルのランク」と書いていたが、そのスキルを評価するのも容姿を評価するのも手間はそんなに変わらないのでは?と思ってしまった。

「私の履歴書」ではこういったスキャンダルについても正面から説明するかどうかで、その人の評価が大きく割れることになる。最近ではプロゴルファーの岡本綾子氏が協会の理事長就任をめぐる樋口久子との確執をどう書くのか注目されたが、岡本氏は自身が体調不良で自ら辞退した、とうまくかわした。少し物足りなかったが。

思い出されるのはプロ野球界でもドンと呼ばれる読売新聞の渡邉氏。球界のスキャンダルもさることながら、実は現役時代は情に厚い敏腕政治記者だったことが明かされ、それ以降明らかに氏に対する世間のバッシングは弱まった。

永らく人目につく地位にいれば、やむをえず非合理的な決断をしなければならないこともあるとは思うが、そういっためぐり合わせや対処も含めての社会的責任である。ひとたび責任ある地位に就いたならば、何かあったら責任を取って辞める覚悟を常に持っていてもらいたいものである。

久々の☆。


いつも読んでいただいてありがとうございます。
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