39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。


キネマの神様 (文春文庫)キネマの神様 (文春文庫)
(2011/05/10)
原田 マハ

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このお話は映画をめぐってある男が人生を取り戻すお話です。というか、そう読めました。
主人公のゴウは、これほどに冴え渡る映画評論を書ける人ですから、さぞや知性に溢れた人なのでしょう。それが何かのきっかけでつまづいた。こんなはずじゃなかったのにと思いながら、ギャンブルに癒しを求める、借金がかさむ、さらに色んなものを失う、の繰り返し。自分を省みられる人ですから、どんどん虚しくなっていきます。

ギャンブルにはのめり込まなくとも、人生を虚しく感じている人はたくさんいると思います。
そんな老人が、ブログを通じて本当に心を通い合わせられる友人に出会った。
お互いに老い先短い2人はその出会いをかけがえのないものだと思い、全力でお互いにぶつかりあった。
そして2人は自分の人生を取り戻すのです。この二人のやり取りが実にいい。

そんなきっかけを与えてくれたキネマの神様も、二人のことを温かく見守っていることでしょう。
やっぱり、こういう喪失感を感じている人が何かを取り戻す話って、いいですね。
と言いながら、実は私、「ニューシネマパラダイス」観てません。でも観てなくても十分楽しめるお話でした。
もっと登場人物を減らしても良かったかも。☆☆☆☆。